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夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版のhorahukiのレビュー・感想・評価

4.2
人は心のままに生きねばならない!

めちゃくちゃ面白い!!サイコーな傑作!
「何千人の命なんて知ったこっちゃねぇ!それより私の恋のが大事だ!」と仰せられる龍神様(ジャケの人)が、ばあやに「わがままはダメよ!」と嗜められみんなでワハハする神々の遊びの裏で、人間界では干ばつのせいで大変なことなってる田舎怖いよホラー。

すんごいシリアスムードでゾクゾクするような田舎の不穏な雰囲気を高めたかと思えば、神木くんの『妖怪大戦争』みたいなビジュアルをした妖怪&神たちが上に書いた気の抜けたコントのようなお遊びを始めるアホ展開に中盤で突然変異!😇最初はめっちゃ真面目に見てたのだけど、そのあたりから笑いながら見てた🤣

そもそも「目にゴミが入ったみたいだから水を少し貸してくれませんか?」と村人にお願いした男に対して、村に水がないもんだから母乳で洗い流そうとおっぱいポロンしてた序盤でもうぶっ飛んでたわ😂

2年も雨が降らない村の上に夜叉ヶ池という池があるのだけど、昔からの言い伝えで1日3回決められた時刻に鐘を鳴らさなければ池が溢れ村を押し流してしまう…と言われてる。村人は誰も信じてないのだけど、主人公&ヒロインの夫婦が先代から引き継いで律儀に鳴らし続けてる。

その鐘の言い伝えは当然ガチで、龍神様的には鐘が鳴らなければ洪水が起こせる→自分も池の外に出られる→遠距離恋愛中の彼氏に会いに行けるっていう事情があるもんだから、冒頭に書いたようなわがままを言ってるというわけ。ヒロインが鐘を鳴らす真横で「鳴らすなよ…鳴らすなよ…」みたいなシリアス顔→鳴らされて「アチャー😣」って神々みんなでズッコケるシーンとか笑った🤣しかもスローで。神様たちゆるい!!

モネのように黒煙を青空に巻き散らす機関車からバトンタッチするかのように男が村へと歩き出す道のりを映し出す冒頭の編集での誘導で、本作の主題は十分に伝わるし、実際にクソ村人たちをまとめ上げてるのは西洋の服装をした成金。精神的アイデンティティを忘れ、その精神性すらも恣意的に捻じ曲げられ利用される嘆きを片側だけでなく両側(と過去)に対して投げかける。そんな意地を感じさせる作品。

序盤はずっと「何か」の存在を画面の端々から感じさせる構図を連発していて、それは人の存在感であっても神の存在感であっても特に分け隔てなく使ってる感じ。フアンルルフォのやつみたいな霊的・幻想的感覚の漂ううち捨てられたかのような無人の街の中でも、ズームアウトしていくカメラがそのまま室内の空間にまで引いたり、物越しに捉えるカメラが多い。その後も森の中での木々の背後に人物を動かすようなショット、人物からあえて逆方向へ移動させた上での水へのクローズ等々で人間を相対的に矮小化させてる。

主人公夫婦とやってきた友人との会話での構図も面白くて、力関係の主従を向く方向と見える・見えないで的確にシーソーさせるやり取りがゾクゾクする。友人は最初、人ならざる者のような声色で語るヒロインの顔が見えない背面とのやり取りからだったのに、話題とともに今度は友人が映らなくなり…と明らかに恐怖シーン前の盛り上げ方なのに、その後に待っていたのは神々のアホな遊びというセンスも素晴らしい!!😂そしてクライマックスのあの大迫力な演技合戦と最強のカタルシスよ!なんかめっちゃ感動した!「茨の道はおぶってとおる」な主人公がイケメンすぎる!
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