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ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカットのbackpackerのレビュー・感想・評価

4.0
ステッペンウルフ。哀愁漂う中間管理職の悲劇。

『ジャスティス・リーグ』は、ザック・スナイダー監督が志向した、DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)の総まとめ的作品。しかし、残念ながらサックは、娘さんの夭逝という大変な不幸に直面したため、ポスプロ段階まで進んでいながら降板。
その後、MCUの『アベンジャーズ』等を手掛けたジョス・ウェドンが後任となります。彼は、ワーナー・ブラザースの意向を受け、シーンの追加撮影と2時間映画への短縮化の要望を果たし、無事公開にこぎつけました(以下、劇場版『ジャスティスリーグ』については「劇場版」、ザック・スナイダー・カットについては「本作」とします)。
ところが、ダークな世界観からの脱出を試み、ユーモラスでファミリー層も楽しめるような作風となった劇場版は、興行的に残念な成績となり、熱狂的ファンからは批判の嵐。DCEUそのもののあり方も、大きく方向転換する原因になってしまったのです。

期待を裏切る結果となった劇場版に対し、ファン達は黙っていません。
まだ本作の存在が明らかになっていない劇場版公開直後から、「スナイダーカットを公開しろ!」という署名運動が展開されていきます。その熱意たるや、凄まじいものがありますね。
結局2019年3月には、ザック・スナイダー監督自身が、「スナイダーカットは存在する」と公表し、2020年には本作の制作が開始されます。再撮影や編集を行い、2021年に遂に配信・ディスク販売へとこぎつけたのです。
これまでも、多くの映画でディレクターズカット版が制作されてきましたし、中には劇場公開版とは異なるバージョンが複数ある(『ブレードランナー』や『スター・ウォーズ』等)作品もあるわけですが、配信プラットフォームとファンダムの声に押される形という本作は、将来的には、全く新しい方向性を示したエポックメイキングな作品と評価されるかもしれません。

そんな本作を鑑賞し、最初に抱いた感想。
「ジョス・ウェドン版、よく頑張ってたんだな。あれはあれで良かった」
そうです。前作の再認識、再評価です。

本作が、ザック・スナイダー監督の情熱を詰めに詰め込んだ映画として、全5章240分の超大作として生まれ変わった作品であることは、鑑賞前から情報として把握していました。
それでも、実際全貌を見てみれば、各キャラクターに対し非常に丁寧な掘り下げをしているものの、あまりにも長い!
こんなに長い映画のシナリオをそのままにして、2時間に収めるの無理でしょ??ワーナーの要求が無茶振り過ぎですよ。
それをなんとか要望に沿うために、自身で追加撮影して、2時間映画に仕立てたジョス・ウェドン。そうやって考えると、十分に頑張っていたと思います。
逆に、キャスト陣からの抗議や批判が噴出していた劇場版用追加撮影シーンが意外と僅かだったことがわかり、驚いてしまいました。
もっとも、出演者からの声が昔よりもダイレクトに、メディアを介さずきこえてくるようになった昨今ということもあり、ジョス・ウェドンと劇場版が、多くの問題を抱えていたことも伝え聞いていますので、評価はこれからまだまだ変わりそうですが。

なにはともあれ、『マン・オブ・スティール』『バットマンVSスーパーマン』そして本作という、DCEU三部作がひとまず無事完成したことは、大変喜ばしい限り。
ただし、あまりに多くの点で、本作の世界線が今後どうなってしまうのか、疑問と謎が残されたままになっています(個人的には、マーシャン・マンハンターがどう関わってくる予定だったのか、本当に気になります)が、2022年現在は、これ以上本作のような物語が作られることはなさそうな雰囲気。
フラッシュ・ポイントを映像化するらしいフラッシュ単体映画のシナリオによっては、まだ可能性は残されているように思えますので、今後もDCEUが暗〜い世界観のまま、映画を作り続けてくれないかなぁと願っています。
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