円柱野郎

暗殺・リトビネンコ事件(ケース)の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

2006年に亡命先のイギリスで毒殺された元ロシア連邦保安庁(FSB)の職員、アレクサンドル・リトビネンコ。
彼の死の真相に迫ったドキュメンタリー映画。

リトビネンコ氏の暗殺から1年後に公開されたドキュメンタリーだが、監督は以前からチェチェン紛争などの取材を通じて氏に接触していた様で、映画はその生前のインタビューで主に構成される。
内容はFSBがチェチェン進攻の口実に国内で擬装テロを起こしたり、暗殺を行っていた事実を糾弾するもので、当時のFSB長官がプーチンだったという事実も絡めてロシア社会における強権的な大統領の素性に対する懐疑的なテーマに基づくものである。

個人的にはドキュメンタリーで描かれるものが全て事実かどうかはあまり信じていないのだが、本作は状況証拠の積み重ねでFSBの活動を暴こうとする意思が明確にあり、そういう意味で制作者の信念が感じられる力強い作品だと思う。
リトビネンコ氏をはじめ、反プーチンのジャーナリスト(劇中でもポリトコフスカヤ女史の暗殺が言及されている)等に対する事実は確かにあるわけで、こうして第三者的な印象で観ると…やはり「プーチンを怒らせるとヤバい」のではないかと感じてしまうのが恐ろしい。

作品としては反体制派に対するインタビューが多いので一面的な印象もあるが、一方でロシアの国民性が自由主義的なものに慣れておらず、故に未だ(2007年当時)に全体主義的なものが成立してしまうのではないかという指摘は興味深い。
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