タケオ

悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズのタケオのレビュー・感想・評価

3.5
-レザーフェイスのキュートさは何処へ・・・『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』(22年)-

 今なおホラー映画史に燦然と輝く金字塔『悪魔のいけにえ』(74年)は、そもそもトビー・フーパーが「コメディ映画」として制作した作品だった。近年ではすっかりそのことが忘れ去られてしまっているように思える。
 一応本作にも笑えるシーンはいくつか用意されているのだが、それは度を越えたスプラッター描写がもたらすどす黒いタイプの笑いであって、決して「コメディ映画」としてのユーモアによるものではない。そもそも『悪魔のいけにえ』に登場するレザーフェイスは「不器用でどんくさい末っ子」というなかなかキュートなキャラクターだったはずだが、本作に登場するレザーフェイスは『ハロウィン』シリーズ(78年~)のマイケルや『13日の金曜日』シリーズ(80年~)のジェイソンのような「寡黙で残忍な殺人鬼」になってしまっており、レザーフェイスならではのユーモラスな魅力を提示することができていないのも残念だ。物語終盤のバス内での大殺戮シーンにはなかなか目を見張るものがあったが、やはりそこで生まれる高揚感も『悪魔のいけにえ』とは全く別種のものである。蘇った殺人鬼と1作目のファイナル・ガールがリベンジマッチというプロットがまんま『ハロウィン』(18年)だった点からも、どうしても名作ホラー映画のリブートの限界を感じざるを得なかった。
 しかしその一方で、『悪魔のいけにえ』ならではの「異界との接触」という感覚を描くことができていたのは好印象。「いくら綺麗事を並べたところで、自らの常識が通用しない-異界-は今も昔もすぐそこに存在している」というオリジナル版の恐怖に自覚的であったことが、本作にある程度の「同時代性」をもたらしている。不満は多いが決して嫌いな作品ではない。
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