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陰陽師: 二つの世界のShingoのレビュー・感想・評価

陰陽師: 二つの世界(2021年製作の映画)
2.8
中華ファンタジーが好きな人にはオススメ。昨年は「羅小黒戦記」で中国アニメの底力を見せつけられたが、実写ファンタジーもかなりレベルアップしている。何より、チャイナマネーを惜しみなくつぎ込んで、全編にわたってVFXに手抜きがない。

一応、夢枕獏の「陰陽師」が原案。でも、清明と博雅の名前以外、まったく別物。
清明が妖怪の血を引いているというのは原作準拠ではあるが、なぜか九尾の妖狐ではなく9つの頭を持つ蛇(相柳)だ。いやそこは、九尾でええやろ。ナルトっぽい場面もあることだし。
日本独自の太鼓橋、平京城≠平城京というネーミングなど、意外と日本リスペクトも感じられる。

清明を演じた陳坤(チェン・クン)は、とにかくイケメンすぎる。最近流行りのジェンダーレス男子じゃなく、男くさい正統派。もっと若いのかと思ったら、76年生の45歳だった。
あと、人間なのに清明の式神になりたい美少女・神楽を演じた沈月(シェン・ユエ)が可愛すぎる。神楽という名前、武器として使う番傘…元ネタは銀魂?
永作博美っぽい周迅(ジョウ・シュン)も素敵。

烏天狗に雪女、天邪鬼など日本妖怪も多数登場。それぞれ特殊メイクやフルCGで造形されたキャラクターは、なかなか個性的。
特に、性格はまったくあまのじゃくじゃない天邪鬼が、命を助けられた博雅に恩義を感じて、彼のために体を張るところは、なにげに一番の見せ場だったかも知れない。

中国らしい武術アクションがメインだが、中盤の追走シーンで法術を使う場面もなかなかいい。床が動く歩道みたいになって走っても前に進まないとか、無限に続く襖とか。ちょっとドクター・ストレンジっぽさもあって、五芒星の魔法陣でバリアーはったりもする。
雪女が襲ってくる場面でも、雪玉大爆発からの氷柱攻撃、凍ってしまった人間が粉々に砕けたり。単調なアクションを避け、場面ごとに異なるアイデアで飽きさせない工夫がなされている。

脚本はやや弱く、最後は尻すぼみな印象もある。覚醒した清明が完全に武闘派になって、ラスボスとドラゴンボール始めるのは、ちょっと笑ってしまったが…。
しかし、それが仲間を救うため、人間をやめて完全に妖怪化するという苦渋の決断だとわかる展開は、悪くなかった。
太鼓橋で博雅と神楽が再会するラストも、語りすぎず余韻があってよい。

「陰陽師 とこしえの夢」という別作品もあるようで、こちらも見てみたい。博雅の背中に翼が生えて飛んでたけど。もう何が起こっても驚かない心の準備はできている。
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