このレビューはネタバレを含みます
原作は一巻のみ既読。
令和の世に作られた『仕掛人・藤枝梅安』だが、なかなかに見応えのある一作だった。
原作は必殺シリーズでも使われた『おんなごろし』をベースに『梅安晦日蕎麦』のエピソードを織り交ぜたストーリーだが、なかなか掛け合わせ方がうまい。
別々のエピソードの要素がパズルのようにうまくかみあっていくのは観てて面白かった。
その一方で『鬼平』的な盗賊同士の密会の描写もあり、観ている方をニヤリとさせてくれる。
豊悦の梅安は、全体的にクールな感じだが飄々としたところもあってカッコいい。その一方で仕掛人の掟は守りながらも、非情に徹することができないところもある。そこが原作との大きな違いだろう。
その点も踏まえて観ていると、セリフの間や仕草、身のこなしなどに、なんとなくジェイソン・ステイサムが演じる役にも似た雰囲気を感じた。イメージは『メカニック』の一作目や『キャッシュトラック』あたりの感じ。
それなら暗殺のターゲットである妹に対して思いをはせてしまうキャラなのも納得。
これまでの梅安のキャラでありそうでなかったアプローチなだけに(そして自分がステイサム好きなだけに)なかなか魅力的に見えた。
それ以外にも初期必殺を思わせる凝ったカメラアングルやライティングに派手なチャンバラの見せ場、
そして池波正太郎作品最大の見どころともいえるさまざまな食事の場面と、内容は盛りだくさん。
とにかく面白い作品を作ろうという作り手の意気込みと現場の底力を感じた。
まもなく公開される次回作や、来年の『鬼平犯科帳』にも大いに期待できる。
