平野レミゼラブル

スナッチの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

スナッチ(2000年製作の映画)
5.0
【クールでマヌケなロクデナシどもが、ありえん挙動で弾け回る】
大好きな作品だ。
まず何も言わずにOPだけ見てほしい。次々と人がリレー形式で現れクレジットされていく。この作品に影響を受けた成田良悟先生の『バッカーノ!』や『デュラララ!!』のOPでもオマージュされただけあり、いつ見てもクールでカッコいい。
だが、本編はというと揃いも揃ってどうしようもないロクデナシどもがツッコミ所満載な行動を取っておかしなことになっているクライムコメディ群像劇である。

その前身である『ロック・ストック(略)』が「ヤベェー奴同士をぶつけて連鎖消滅させるぷよぷよ」なら本作は「玉を射出したらなんかありえん挙動で弾き回ったピンボール」といったところか。
作中人物が取った何気ない行動が、別の誰かにとってのとんでもない結果をもたらす。牛乳を投げ捨てただけである人は死に、ある人は危機を脱出する。とんだバタフライ・エフェクトだ。

群像劇だけあって多い登場人物も一人ひとり非常に濃いキャラ付けをされていて魅力的なのも良い。
DVDジャケットで一応主役の筈のジェイソン・ステイサムを差し置いて正面にいるブラッド・ピットのミッキーはそれだけの活躍と引っ掻き回しをするし、出る作品間違えたんじゃないかっていうくらいの強キャラ″ブレッド・トゥース″トニーもところどころ愛嬌があって憎めないし、今作のヤベェー奴筆頭であるブリックトップは終始おっかない。
でも一番の推しはアビーだね!「不味い飯に紅茶、悪天候にメリー・ポピンズのロンドンだ!」に始まるなんかどことなくユニークなセリフ回しに、ギャングのボスとは思えぬ小市民的立ち回り、それでいて彼もまた物語をあらぬ方向に振り回すトラブルメーカー的役割も果たしてくれる非常に美味しいキャラクターだ。

ただ、そんな魅力的なキャラクター達も退場する時はあっけなく退場してしまう…そんな世の無情さも表した作品だったり…(見てる側は爆笑している)

二つの別々の話が一つに収束していく群像劇としては『ロック(略)』も同じで、やっぱりよく出来ているんだけど、個人的には演出や展開のぶっ飛び具合とOPの格好良さで断然『スナッチ』派。
ただここは本当に好みの違いでしかないので、各自両方見て判断してください。
傑作!!