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そして、バトンは渡されたのYACCOのレビュー・感想・評価

そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)
4.0
2019年の本屋大賞を受賞した原作を読んだ時、ありえないような設定の話なのに優子の成長に涙する自分がいた。今作の映画化とキャストが発表された時、自分が原作を読んでいた時に抱いていたイメージとかけ離れていないことに安堵しつつ、映画は原作から脚色が入っていると聞いて不安も抱きつつ鑑賞したが、自分がこの物語に抱いていたものが壊れたり覆すような脚色はなく、見ている間も見終わった後も、原作を読んだ時と同じ、温かい気持ちで満たされた。

主人公優子と育ての母親梨花と3人の父親たち。
多くを語るとネタバレになってしまのだけれど、原作を読んだ時も思ったのだが、優子(というバトン)を受け入れてくれる人たちは誰もが愛に溢れている。この世の中、これだけよい人たちに囲まれて生きていけるなんて優子はむしろ幸せなのではないかと思ってしまうほどだ。
原作を読んでいた時、印象的だったエピソードも今作に盛り込まれていたし、それを演じる役者たちも合っていたと思う。
主人公優子の本当なら一風変わった環境で育ったはずなのに、飄々としたところは永野芽郁が可愛らしく演じてくれた。愛される優子を表現してくれたと思う。
そして、森宮さん。人が好い森宮さんの素朴な感じが良かった。ありえない許容と順応。「え?いいの?」ってことを受け入れて肯定して、真摯に愛をもって行動する。「こんな人いるのか?」と思ったけれど、今作を見たら、なんとなくいそうな気がしたから不思議だ。
石原さとみ演じる梨花さんも、梨花さんなりの愛をみせてくれたと思うし、それでも許されちゃう愛される女性は石原さとみに合っていたと思う。
私は既に原作既読で見ていたけれど、もしかすると原作を読んでいない方がこの映画を見ると、もっと驚きを感じたりするのかもしれない。そして、それが少し羨ましくもある。

原作を読んだ時も思ったけれど、この物語はある種のファンタジーみたいなのに、この映画を見ているとこんな世界もあるのかもしれないと思えるし、あの世界を生きる人たちの姿を見ると温かい気持ちになれる。
現実の世の中はいささか厳しいものになってきているように感じるからこそ、この物語の温かさに涙してしまうのかもしれない。
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