アニマル泉

ひまわりのアニマル泉のレビュー・感想・評価

ひまわり(1970年製作の映画)
5.0
ソフィア・ローレンが圧巻である。凛とした立ち姿が力強く美しい。本作は女から戦争を描いた秀作である。様々な女たちが登場する。ジョバンナ(ソフィア・ローレン)マーシャ(リュドミラ・サベーリエワ)アントニオの母(アンナ・カレナ)それぞれが逞しく美しい。本作は圧倒的な「量」の映画である。地平線まで続くウクライナの無限のひまわり、おびただしい群衆。ジョバンナはその「量」に負けない。埋没することなく孤高に存在する。それゆえに孤立と絶望が浮き上がるのだ。
ジュゼッペ・ロトゥンノの撮影が素晴らしい。夕景の海辺のジョバンナとアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)の情事場面のロングショットが美しい。制作・カルロ・ポンティ、監督・ヴィットリオ・デ・シーカ、脚本・チェザーレ・サヴァッティーニ、イタリア映画の重厚な布陣だ。本作は冷戦下のソ連で撮影された初の国際共同制作である。
ジョバンナとアントニオがすぐに情事に耽るのがイタリアらしくて可笑しい。アントニオがジョバンナのイアリングを飲み込んでしまい大騒動になる。それでも再び抱き合う時にジョバンナが残ったイアリングをさり気なく外すのが上手い。
階段が印象的だ。ジョバンナが駅でエトレ(ゲルマノ・ロンゴ)からアントニオの最後を聞く大階段、工場のイタリア人労働者(シルヴァーノ・トランクィリ)を尾行する歩道橋とエスカレーターなど節目で階段が現れる。
駅と列車は本作の重要な主題である。出征、帰還、再会、別れは全て駅と列車が絡む。映画の王道である。
黄色が強烈だ。ひまわり、大量の卵のオムレツ、ジョバンナの黄色のワンピースが映える。
本作はヘンリー・マンシーニの名曲なしにはありえない。観客は音楽で泣くのである。
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