馬井太郎

ひまわりの馬井太郎のレビュー・感想・評価

ひまわり(1970年製作の映画)
4.5
アントニオ(マストロヤンニ)の居場所をようやく探し当てたジョヴァンナ(ローレン)は、彼の住んでいる家の前に立って中をうかがう。
若い女マーシャ(サベーリコワ)がひとり、庭に干した洗濯物をとりこんでいる。ジョヴァンナの視線を気にし始める。このとき、幼児がひとりやってきて、家の入口でドアを開け、ジョヴァンナに微笑みかける。彼女の顔が急速に変わる。獲物を狙う鷹のような眼でじっと見据える。カメラが寄る。二人の間に生まれた、後のシーンでマーシャからカチューシャと呼ばれる幼児の登場は、時間経過としての凶器にも等しい。その演技をしない幼児そのものの笑顔は、この映画での最高のシーンを作った。
このカチューシャこそ、「ひまわり」ではなかったか。
ミラノ駅でのラストシーン、ジョヴァンナの後方に「オリベッティ」の文字が見える。懐古するファンもおおいことだろう。