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ステキな金縛りのMOCOのレビュー・感想・評価

ステキな金縛り(2010年製作の映画)
4.0
「3時間で戻ってきますから」(エミ)
「2時間9分までなら待ちましょう。もちろん『スミス都へ行く』の上映時間です」(段田)


 冴えない弁護士・宝生エミ(深津絵里)は別居中の妻矢部鈴子(竹内結子)に対する殺人容疑で逮捕されている矢部五郎の弁護を担当することになります。矢部五郎は事件当日小多摩の宿屋から一歩も出ていないのですが、状況証拠は矢部が犯人であることを示唆し、宿屋に居たアリバイ証言をしてくれる人もいないのです。

 矢部に接見したエミは「その日は旅館で一晩中金縛りにあっていた。落武者が私の上にまたがっていて動けなかった」と主張されます。

「矢部は犯人に違いない」と上司の速水悠(阿部寛)に報告すると速水は「たとえば自分が犯人としてだよ、アリバイに金縛りの話なんかするか?普通。もっとましな嘘をつくだろう。俺はな、かなりの確率で本当に金縛りにあっていたんだと思っているよ」と言われます。さらに小佐野検察官(中井貴一)に冗談混じりで「落武者を証人として呼んでくるしかないだろう」と言われたことから矢部が泊まっていた小多摩の鬼切村の落武者の里にある宿屋『しかばね荘』を訪ね主の夫婦に聞き取りをします。
 女将は「矢部は部屋にいなかった」と証言しているのですが、矢部はトイレを利用した際に宿泊していた『歯軋りの間』の隣の幽霊が出ると言う噂で使用していない『耳なりの間』で間違えて寝ていたために女将が「矢部は不在だった」と思ってしまった可能性に着目します。
 最終バスを逃し、急な雨でタクシーも来ないためにエミは『耳なりの間』での宿泊を決め、金縛りにあい矢部に一晩中またがっていた落ち武者・更科六兵衛(西田敏行)に出会います。

 エミは六兵衛に法廷での証言を求め、六兵衛は「矢部五郎が無実なのに裁かれようとしている」ということを知り、400年以上も前に背信行為の濡れ衣を着せられて打ち首獄門となった身の上と重ね法廷で証言することを了解します。慰霊碑を建てることを条件に・・・。

 エミは六兵衛を事務所へ連れ帰り速水に会わせるのですが、六兵衛を見ることができるのはほんの一握り人だけで、速水にはその姿を見ることができませんでした。

 公判は六兵衛が裁判所に来ていることを証明することから始まり、エミ以外は誰も六兵衛の姿も見ることも、声も聞くことができないためにエミが行う代弁は小佐野から一人芝居と言われてしまいます。
 エミは六兵衛に笛を吹かせてyes noの返事をさせます。
 その公判の途中、六兵衛は小佐野は自分を見えていないふりしていることに気がつきます。

 翌朝、六兵衛が裁判に表れた様子を伝えるイラストを新聞の一面に見たエミは驚き、六兵衛を見ることができる数名を集めて共通点を探します。
・最近運気が下がっている
・最近死を身近に感じる瞬間があった
・シナモンが好き(口にした)

 エミは小佐野の事を調べると、六兵衛に小佐野が最近亡くしたペットの犬を向こうの世界から連れてこさせ、その対面から六兵衛が見えていることを認めさせます。

 世間が注目することとなった公判当日、向こうの世界の公安局公安課の段田譲治(小日向文世)が「(世間の騒ぎに)上はお怒りだ」と六兵衛の強制送還に現れます。そんな状況を救ってくれたのは敵対する小佐野でした。小佐野は公判で「六兵衛のような家臣を裏切って処刑されるような男の話を・・・」と切り出し絶対に勝てる自信があったのです。

 エミは六兵衛に向こうの世界から被害者鈴子を連れてこさせ裁判で直接証言させることを思い付くのですが、六兵衛は「無理だった」と帰ってきます。
 その時、エミに勝ち目がなくなったと判断した段田が再び六兵衛の強制送還にやって来ます。抵抗できないと悟ったエミは「3時間だけ待って欲しい」と言い段田が好きな『スミス都へ行く』のDVDを差し出します。エミは六兵衛を外に連れ出すと・・・そして別れが・・・。

 体調を崩して入院した速水を訪ねてエミは経過報告をしながら「鈴子は本当は死んでいないかも、鈴子そっくりの姉冬子が怪しい」と報告します。

 エミは冬子との面会で「あること」を確信すると再び速水の元を訪ねその報告をするのですがその最中、速水は病状が悪化し昇天してしまいます。直前にエミは段田へのお願いを速水に託します。
 
 そして公判は意外とは言えない意外な方向へ進みエミは矢部五郎の無罪を勝ち取ります。

 裁判が終わり、六兵衛にもう一度会いたいと願っていたエミの前に姫(エミ)を喜ばせようと、幼いときに亡くしたエミの父親(草彅剛)を連れた六兵衛が現れるのですが、裁判で勝利して既に幽霊をみることができる共通点から外れてしまっていたエミには・・・。


 落武者のようなカッパ頭のタクシードライバーの生瀬勝久。
 ファミレスの少し外れたウエイトレスの深田恭子。
 ノコノコ現れる間抜けな陰陽師・阿倍つくつくの市村正親。
 駆け出しの出たがり俳優の佐藤浩市 ・・・ちりばめられた三谷幸喜監督のギャグに大笑いです。
 日頃から中井貴一氏は上手いと思っているのですが、改めて多才な中井貴一氏の演技の上手さを思い知らされます。
 深津絵里さんが主演した4本目の2011年の作品、コメディアンとしての西田敏行氏の表情と爆笑芸に大笑いした後、なんとなくほろっとしてしまう映画です。

 キャスト 深津絵里 ・西田敏行・阿部寛 ・中井貴一 ・竹内結子 ・ 山本耕史 ・浅野忠信 ・生瀬勝久・ 唐沢寿明 ・佐藤浩市 ・市村正親 ・草彅剛 ・篠原涼子・ 深田恭子・小日向文世 ・戸田恵子・ 梶原善 ・浅野和之 ・大泉洋 ・・・2011年作品とはいえ凄すぎません?三谷幸喜氏の映画ならギャラ無しでも出たくなりますよね。
 そんな訳でWikipediaによると北海道テレビ放送(テレビ朝日系)制作の『おにぎりあたためますか』の愛知県名古屋市でのロケ終了後の飲み会で三谷監督と合流した大泉洋氏は酒の席で作品への出演を依頼され、翌日半信半疑でロケ地に赴き、一瞬だけの弁護士役の撮影をしたことがフジテレビに無許可だったために「業界のタブーを犯した事件」として大問題化し、一時は放送自体がお蔵入りする可能性もあったようです。後に大泉洋は「こんなにも人は怒られるのか?ってくらい怒られた」と語っているそうです(要約)。

 もう40歳に近い深津絵里さんが社会人になって間もない駆け出しの弁護士のような役作りをしているのは驚きの演技力です。
『ステキな金縛り』はステキな深津絵里さん・西田敏行さん・中井貴一さんに出逢えるステキな映画です。
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