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ノイズのbackpackerのレビュー・感想・評価

ノイズ(2022年製作の映画)
3.0
この島の"ノイズ"は、誰だ

原作は筒井哲也先生の漫画『ノイズ』。
高校生の頃、筒井先生のウェブサイトで公開されていた短編漫画を初めて読んだ時は全く衝撃的で、たちまちファンになりました。
個人ウェブ漫画黎明期の当時は石田スイ先生(代表作『東京喰種』等)の『ペニスマン』や、『ホワイトドーム』『人生ゲーム』等の独特かつクセ強な作品が数多ありました。
筒井作品も同様に、数多のクセ強ウェブ漫画家の一人。中でも、インターネット時代を描いたリアルなサスペンスを、これまたリアルな絵柄で提供するという作家は他になく、大変ユニークな存在でした。

「この作者、どうやら漫画が出版されているようだ」と判明し、『ダズハント』『リセット』『マンホール』のガンガン時代3作品を探して購入しましたが、当時『マンホール』発売からも数年しか経過していなかったにも関わらず、かなり大きな書店にあるかどうかといった状況。いやー、懐かしい。
『マンホール』以降紙面を飾った作品が発表されることはなく、もしや引退されたのでは……と思っていましたが、まさかの出版社をスクエニから移籍。集英社の『ジャンプ改』にて、『予告犯』の連載を始めたのです!この時は本作に嬉しかったなぁ。


長々と筒井哲也先生の話を書いてしまいましたが、本作は、集英社移籍後にグランドジャンプにて連載していた、『noise』(全3巻)を原作とした実写映画化作品です。筒井作品としては『予告犯』に続く2作目の実写化となりました。(個人的には一番思い入れ深い『マンホール』を実写化してほしいところ。)
ただし、本作は、原作の展開を拝借したうえで、環境・人物相関図・設定を大胆に変更し、オリジナル展開のラストに持ち込んでおります。
とはいえ、あまりの酷さにネタにされたり、嘲笑されたりするような、所謂〈漫画の劣化実写化映画〉とは異なり、サスペンス性は原作漫画よりもリアルになっている、むしろ面白いのでは?と思える代物でした。残念ながら、ありきたりなサイコサスペンスみたいになってしまいましたが……。


正直、原作における主人公・圭太と親友純の関係性の描写量に対して、結末の"山籠り"は無理があったように思えます。それを成し続けることができるのか?という視点でも(勿論できなくはないが)難易度は高い展開です。おそらく、このまま映像化したのでは、ウケは良くなかった気がします。政治的皮肉も盛り込まれていたため、そこを映像化する勇気が日テレにあるのか問題もありますし。

映像化にあたって、大胆に地方の山間部から離島に環境を変えたり、離婚調停中の奥さんとの関係性を良好化させたり、幼馴染達の過去に重苦しさを付加したり……と、かなり抜本的に手を入れたことで、良くも悪くも別物へと姿を変えましたが、これはもう漫画実写化云々の視点で判断すべきではないですね。
あくまで漫画『noise』を下敷きにしたオリジナル脚本の映画であり、それそのものの出来栄えは分けて考える。
するってえと、この映画に対し思うところは……やっぱり「ありきたりなサイコサスペンス」という着地ですかねぇ。
ロケ地全体を細やかに映し出す様子は、ストーリーのコンパクトさとマッチしていて結構好きですし、主人公達の挙動一つひとつも丁寧で、その点も好み。
だけど、オチがね……丸わかりというか、それしかないじゃんって感じで、なんか……ね。


久しぶりに邦画って感じの邦画を見れたので、それ自体は満足です。原作を知っている方もそうでない方も、どうぞお試しください!
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