B5版

わたしは最悪。のB5版のレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
3.4
ダーク・ロマンティック・コメディジャンルらしい。この語感よき。
今後めちゃくちゃ観たいジャンルだな。

「これが私の人生であってる?」
アラウンド30の年代に起こる漠然とした不安や焦りのことを「クォーターライフ・クライシス」現象というそう。
つまり名前がつくくらい凡庸な衝動。
何者かになりたい、という一度は誰もが思い描く漠然とした憧れ。
主人公も例に漏れず、しかし焦がれた煌びやかな世界とは作家の妻という立ち位置でしか交わらない居心地の悪い大人になってしまった。

30歳すぎてまだ憧れに手を伸ばして邁進する主人公はかなりポジティブというかエネルギッシュな性格だ。
しかしきまぐれで嘘つきで浮気者という己の最悪を自負する冷静な視点もある。
大人としてわきまえられない、落ち着けない自分。
最悪、それはわかってる。
様々な出会いと別れを繰り返してなお、自分の意志や奔放さを手放せない人間臭さが段々と好きになってくる。

私的にはラストはファンタジーというか、映画のスタンスの一貫性を揺らがせてやないかとも思いました。
が、30超えて自己実現にありつくなんて幻想だという日本の現実を勝手に主人公に反映してるだけで、よく考えれば身近な死を経て手に入れたものが「堅実さ」なんて侘しいラスト、いかにもどうしようもない中年を迎える女への批判的な結末は冷徹さしかなくて嫌だな。

最悪上等、良い子だけの天国なんか行きたかない。
清廉でも有能でもない、しょうもなくて、卑怯で、でもひたむきな等身大の人間の可愛げを愛していきたい。
B5版

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