平野レミゼラブル

とびだせ!ならせ! PUI PUI モルカーの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

3.5
【モルボール欲しすぎて駄々こねたかった……】
日本の朝早くにストップモーションアニメムーヴメントを巻き起こしたモルカーの総集編劇場版!
内容としては特にひねりなくTV版全12話をそのまま連続で垂れ流すだけの30分なのですが、一部を除いて3D、4DXでの上映というTVから文字通り「とびだせ!」した劇場版でしか体感できない特別感がありますね。
そしてもう一つの映画タイトルの「ならせ!」要素として入場者特典の「ならせ!モルカーボール」が!!みんなでモルカーの活躍を見ながら、この可愛らしいボールをPUI PUI鳴らすことで、コロナ禍においても擬似的な応援上映を可能にしたワケです!!
上映時間30分で1400円固定なのは高いのか安いのかよくわからなくなりますが、3Dに加えてモルボールも付き、ここでしか体験できないとなれば最早アド!!体感した人々の反応も上々だったので、上映開始から3日後くらいに意気揚々と向かいました。
うおおおおお!!俺もPUI PUIして癒されるんじゃぁ〜〜〜〜!!!!!

まあモルボール在庫切れで貰えなかったんですけどね……

割と本気でショックだったので、スクリーン前で寝転んで手足バタつかせて駄々こねたい気分だったのですが(大人だったのでやりませんでした)、幸いリピーターの方々がモルボールを自前で持ってきてくださっていたので、上映中もPUI PUI 聞こえてきたのが不幸中の幸い。ありがとうモルカーリピーターの人々……貴方方のおかげで持たざる者も盛り上がることが出来ました……!

内容に関してはTVアニメとあまり変わらないので特筆すべき部分はないのですが、アニメ版の感想挙げてないのでついでにここで書いちゃいましょうか。
本作の制作意図は「渋滞や割り込み、煽り運転など、イライラする車の出来事が数多く存在する世の中。『もしも車がモルモットだったら…』癒し系の車「モルカー」ならそんなストレス社会を打破することができるのではないか」であり、そのため運転でありがちなトラブルや犯罪も巻き起こります。ただそれをもって「人間は愚か」といった風に持って行くのは、ちと穿ち過ぎというか極端な感想じゃないかなっていう風には思いますかね。
確かにモルカー達はみんなどこか臆病で、車という仕事をさせるより庇護したくなる可愛らしさに溢れているため、彼らを良いように利用する人間の方が悪く見えるのは当然のことなんですが、流石にそこまで悪意満々に見る必要もないんじゃないかっていうか。
現に最終話の『Let's!モルカーパーティー!』では彼らも人間の預かり知らぬところで好き勝手しており、案外図太いことが判明しますしね。

そもそも「運転でありがちなストレス解消」云々のコンセプトも4話以降は完全に形骸化しており、どちらかというと里見監督の趣味の映画要素を存分に盛り込んだ「楽しいカーアクションアニメ」くらいに落ち着いていますしね。
正直、自動車トラブルを他に詰め込んだとしてもブラックに偏りすぎて、折角のモルカーの可愛らしさが損なわれる本末転倒な結論になりそうですし、早い段階で路線変更して正解だったと思います。
むしろ、3話の『ネコ救出大作戦』が当初の構想だと「パチンコ店と赤ちゃん」というあまりに生々しくそのまんますぎてNG食らったとのことなんで、『マイ・リトル・ゴート』で見せた里見監督の悪意を極力抑えさせた上の判断は英断です。里見監督の暗黒面も確かに魅力ではありますが、流石にモルカー以外での作品で存分に発揮してもらいたいところ。

それに路線変更して以降のアクション面も、ふわふわもふもふのストップアニメーションなのに迫力があって単純娯楽として純粋に面白かったですしね。
特にお気に入りなのが映画パロディ盛り沢山な8話の『モルミッション』。冒頭からモロに『ミッション:インポッシブル』という大衆娯楽作品のパロですが、そこからさらにアサイラムのドB級映画『メガ・シャークvsメカ・シャーク』というニッチなパロを盛り込むという自由自在っぷり。フェルトならではのモクモク煙表現や、劇場&3Dだからこそ倍増される迫力に思わず唸ってしまいました。

現在もなお、拡大上映や各種リアルイベントなどが開催されるなど、モルカー旋風はまだまだ続くようでして、これはほぼ確実に2期も来るでしょうね。ただ、ストップモーションアニメのジレンマとして、通常以上に準備に時間がかかるのが難点でしょうか。
さらに高望みをするならば、里見監督には一度長編ストップモーションアニメ映画も撮ってもらいたいですね。それも本人の毒を全面に出しつつ、様々な映画オマージュを捧げまくるような大冒険モノを。想像としてはやはり今年大ヒットしたカルトストップモーションアニメ『JUNK HEAD』に近しい感じで。