むぅ

かもめ食堂のむぅのレビュー・感想・評価

かもめ食堂(2005年製作の映画)
4.2
「コピ・ルアック」

私のコーヒーへの想いは、間違いなく"愛"だと思っている。

コーヒーが人だったら「おはよう」「ありがとう」「またね」そんな言葉を穏やかに交わしたい。
お酒が人だったら、道ならぬ恋でも突っ走りそうなくらい夢中になるかもしれない。
先日zoom飲みの最中に寝落ちて(酔って寝たので正確にはあれは気絶だが)、「おいっ!」という皆様のLINEに既読を付けられた時は絶賛二日酔い中の翌日の昼だった。
これはこれで、毎度後悔の伴う愛なのかもしれないが。

「むぅが淹れてくれるコーヒーは美味しい。なんでだろ」
「美味しくなぁれって思ってるからですかねー」
「あ、きっとそれだ。『かもめ食堂』みたいだね」
「映画ですよね?」
「そう。今度観てみなよ」

忙しいカフェで、まだまだオペレーションスキルが追いつかない中、知識なら努力でなんとかなる!と負けん気を発揮したおかげで、コーヒーセミナーまで任せてもらえるようになったコーヒーの存在は、私にとっての同志だった。

午前中のちょっとだけ時間が止まるような、『かもめ食堂』でミドリさんが「ねぇ、知ってます?」と言い出すような、静かな時間。
店長のその言葉が嬉し過ぎて、観てしまったら、その言葉のキラキラが弱くなってしまうような気がした私は、観るのは"熟成"させる事にした。

"熟成"させた分、柔らかくて優しくて奥行きのある『かもめ食堂』に出会えたんじゃないか、と思った。

誰かが淹れてくれるコーヒーの香りが鼻をくすぐって、ウキウキしながら待つ、あの長いような短いような楽しい時間。
そんなひとときを体験させてもらえるような物語だった。

みんなの絶妙な距離感が良い。
私も"心地良いな"と思い思ってもらえる距離感がとれる人でいたい。
きっと店長はその言葉を覚えていないだろう。それがまた嬉しくなるような不思議な映画。

次に観るときは、誰かとおにぎりを食べながら観たい。
むぅ

むぅ