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イン・ザ・トラップー精神崩壊ーのkuuのレビュー・感想・評価

2.5
『イン・ザ・トラップー精神崩壊ー』
原題 In the Trap
製作年 2019年。上映時間 93分。
『ブラック・ミラー』のジェイミー・クリストファーセン主演作!
ブラックミラーに出演し、怪演を世界に知らしめたジェイミー・クリストファーセンが出とります。

幻覚か悪魔か 精神を侵して危ない真実が覚醒する。
フィリップ(ジェイミー・クリストファーセン)は、幼い頃に妹を何者かに殺害されてから『得体の知れない霊的存在』に日々怯え続ける。
そんな息子のために、母は神父の力を借りながらフィリップを守り続ける。
しかしフィリップが感じている霊的な存在は、崇拝と祈りを続けても逃れることが出来ず次第に、フィリップ自身が感じているものは霊的なのか、それとも自身の幻覚なのか、区別がつかなくなる。
数十年後、母が他界してもなおフィリップは不可解な現象が続く生まれ育ったこの家にひとりで暮らし続ける。
キャサリンと出会い、つかの間の幸せを掴むが魔の手がキャサリンに忍び寄り彼女を救うため神父と共に戦うが。。。

なんか奇妙な映画でした。
理解が正しけりゃ、今作品は一種の悪魔祓い系で狂気への転落で物語で宗教映画でした。
演技はまともやし、いくつかのエフェクトシーンは効果的やったんやけど、それでも、今作品には何か違和感があった。
今作品のプロットには様々な展開がある。
事態が収束するまでに2つの大きなひねりがあったんやけど、それはひねりが多すぎたかもしれない。
これは信仰の力を宣伝する映画やと感じる。
『ドラキュラ』とかから『エクソシスト』まで、多くのホラー映画で宗教は強力な解毒剤となってきた。
せや、信仰が万能であるというこの信頼こそが、『神の言葉』という信仰がカメラの後ろにいる人々に少し強すぎたのではないかと疑わせる。
このシニカルな時代に、祈りがすべての悪を追い払うちゅうのは、チョイ単純すぎる気がする。 たぶん製作者たちは、究極の善対究極の悪という投げやりなスタイルを目指したに違いない。
ホラー映画としての論理的な結論(最初のどんでん返しの後)を導き出す代わりに、最後に新たな結論が付け加えられたように感じた。
最後まで末日聖徒教会のコマーシャルを見ているような気分で個人的な好みとしては少し甘すぎる感があった。
曖昧な表現になってしまったけど、せっかくなのでネタバレを避けて、ゾッとするシーンはあったかな。
フィリップの家で悪魔や影が動き回る。
家具が動く。
照明がついたり消えたりする。
よくある呪術的な演出やけど、この辺りは手際がいい。
しかし、音楽はもっとトーンダウンする必要があったんちゃうかな。
サスペンスのシーンは、音楽の激しさによってやや滑稽なものになってはいた。
時々、何か恐ろしいことが起こっていることを意味するような大音量の音楽が流れるが、それは単にカメラが部屋から部屋へとパンしているだけ。 十字架、火のついたロウソク、ロザリオなどの宗教的な図像は、燃やされたり、逆さまに吊るされたり、破壊されたりと、決まりきった悪魔的な方法で表現されることで、絶対的にショッキングなものとして展開。
そないなモンは、もっと単純な時代には衝撃的やったかもしれへんけど、80年代以降、100万を超えるミュージックビデオで見たことがないものではない。
小生はメタラーなのでかもしれないが。
はもはやショッキングなものではないのだが、まるでパンツをそそり立てるようなものだと観てる側を冷めさせる。
批判を重ねるつもりはないんやけど、俳優のジェイミー・ポールには大きな問題がある。
彼のキャラは無邪気なはずやのに、ポールはほとんどワチャワチャ演じてた。
彼の甲高い声とかわいそうな態度のせいで、彼を応援するのは難しいキャラクになってしまってた。
彼は映画の半分を大泣きして過ごすんやけど、これほど哀れで陳腐な人物に共感するのは難しい。 それを求めた脚本のせいなのか、監督の指導のせいなんか、それとも単に俳優のスタイルのせいなのかはわからへんけど、このキャラを嫌いになった。
俳優のデヴィッド・ベイリーが、アンドリュー神父役で重みを与え、より力強いキャラとして登場したが、彼はちょっとオビ・ワンのような感じだが、それでもポールの泣き云に対抗するにはありがたい存在やった。 
今作品は決して悪い映画では無いし、ほとんどの部分はきちんとした演技をしているんやけど、誰かが主の名を冒涜したときにロザリオを握りしめてしまうような人たちによって作られたような気がする。
これが邦画実写やったら、モンスターが現れたら数珠を握りしめてどうにかなるって日本人は誰も思わないはず。
憑依された悪魔はおちょぼ口やったが(良い憑依者は皆そうでなければならない)、他のキャストは『名探偵ダウリング神父』から採用されたように思えた。
個人的にはもう少し歯応えのある、正義感の薄いホラーが好きかな。
もしそれが気にならないなら楽しめるかもしれない。
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