小

くじらびとの小のレビュー・感想・評価

くじらびと(2021年製作の映画)
4.5
美しい映像、クライマックスのクジラ漁の迫力(これだけでも観る価値ありかも)もさることながら、生きることの根源的・本質的な姿が映し出されているような気がして、中盤から目が離せなくなった。

「生と死は隣り合わせ」と意識して生きる。住民たちが<互いの和を何よりも大切にし、自然の恵みに感謝の祈りを捧げ、言い伝えを守りながら生きている>(あらすじ)のは、死が身近にあるからだ。

漁の期間中のあることのタブー、捕ったクジラの配分ルール、行方不明となった者の葬り方、などの言い伝え。愛する者を失った後の乗り越えていく姿や、伝説のクジラの銛打ち漁師の引き際も「死」を意識して生きていない自分にとっては目からウロコ。

死を意識するからこそ、つまらないことで腹を立ててはならず、チームワークを乱すような芽はあらかじめ摘んでおかねばならず、生きている者が悲しみから立ち上がり、前に進めるようにしておかなければならず、引き際が潔くなければならない。

些細なことで揉めたり、ストレスをためたりするのは、なんと贅沢なことなのだろうと観ている間に思ってきた。自分の日常生活も死と隣り合わせかもしれないと想像すると、少しはカッコ良く生きられるかもしれない、そのヒントを感じる映画だった。
小