あなぐらむ

美貌に罪ありのあなぐらむのレビュー・感想・評価

美貌に罪あり(1959年製作の映画)
3.6
山本富士子、若尾文子に野添ひとみに勝新太郎も登場のお盆映画。川口松太郎原作、脚本はいつもの白坂先生じゃなく女性ものを得意とする田中澄江。
今は花屋を営んでいる戦前旧家の没落を若い三人娘それぞれの恋模様の中に描き、古い「家」制度がお金(戦後資本主義)の前で呆気なく瓦解していく様が、少し抑えめの増村タッチで描かれる。
坊っちゃん舞踊家の甘えん坊な勝新が新鮮、支えてずっと微笑みながら切り抜けていくお富士さんの美しさはまさに蘭の華。発展家のお嬢さんスッチーの若尾ちゃんは安定の小悪魔ぶりでありがたい。
唖で口が利けない野添ひとみが川崎敬三への片思いを大きな瞳で可憐に演じるのも見所。
「啞で可哀想」と言われたて「メクラよりマシ」のメモがおかしい。
一番物語を背負うのは杉村春子の母親で、女でひとつ娘達を育てながら、世間に負けて家を手放すその寂しい姿、最後にお富士さんと踊る盆踊りにたまらない哀愁が漂う。
エンディングは勝新とお富士さんの創作舞踊からレビューのように踊りと音が繋がっていく見事なものだが、流石イタリア帰りの増村だけに、また狸御殿の大映だけに、和と洋がこのようなテイストで織り交ぜられた仕上りなのだろう。
導入とラストが田舎の緑の風景で対になって綴じられており印象的。増村度は低いが、映画としては端正で良いと思う。