ごんす

バトル・ロワイアル 特別篇のごんすのレビュー・感想・評価

4.5
何年か周期で自分の中でブームがやってくる映画。
公開当時ちょうどこの生徒達と近い年だったので自分がゲームに参加させられてる夢も何度か見た(だいたい逃げてる)
もはや自分の意思とは関係なく特別な映画になってしまってるのかもしれない。

R15指定の本作を監督が何とかして中学生に観に来いと訴えてたけど、その気持ちも分かる。
綺麗なじゃがいものような顔した藤原竜也がまぁよく叫ぶ。
ざっと抜粋すると

・「ノブー!」
・「狂ってるよぉ!」
・「どうして皆、簡単に殺し合うんだよぉ!」
・「わかるかよ、こんなの全然わかんねぇーよぉ!」
などなど。

叫ぶだけでほとんど活躍しない主人公は当時珍しかったのでは。
しかしヒロインの典子(前田亜季)を守る決意を伝える時は静かに力強く伝えていて久々に観ると意外と良いシーンだなと思った。
叫んでいる場面ばかりを笑ってごめんと少しだけ反省。

ビートたけしが演じた教師キタノの存在や自殺している主人公の父親はじめ大人から子供へのストレートなメッセージを感じる。
それにしても露悪的で不快だと感じる人の意見も分かる。
どんな映画でも自分が好きな映画の酷評や反対意見を読むのは大事だと思っているけれど『バトル・ロワイアル』は本当に存在そのものを許せないレベルで大嫌いという感想も少なくない気がして、好き嫌いは別としてこんなに賛否の激しい日本映画はもう現れないのかもと思う。
ツッコミ所は多いタイプの映画なのでそういう好き嫌いは他の映画同様だとしても思想的な賛否の別れが他の映画と比べて凄いと思う。

思い出補正的なものもあるけどアバンタイトルのテンションの高さは見事。
BR法とは?というのをスターウォーズみたいに潔くオープニングクロールで語るだけでなくワイドショーのリポーターが「今大会の優勝者は女の子です!笑っています!」と前回大会の優勝者の女の子がニタァと笑う所を観せられる。
これ何度観ても凄い。

深作欣二が本作の生徒達と同じ年の頃に感じた大人への不信感や国家への憤りが強く反映されている作品で暴力についての批評性も後に大量に出てくるデスゲームものとは比べ物にならない。

特に灯台の女子達の悲劇は極限状態に置かれた人間が殺し合ってしまう虚しさを見せつけられると同時にあぁこの子達は中学生の子だなぁという感じもする。

もうまともに観れるか怪しいけど、じゃがいもが「わかんねぇーよ、こんなの全然わかんねぇーよぉ!!」と叫ぶ所まで含めてこの灯台のシーンは日本映画の歴史に刻まれているでしょう。

この映画はグッジョブな判断がとても多かったのも印象に残っている。

・栗山千明と柴咲コウが当初逆のキャスティングだったそうだが監督の判断によりこの配役になったそう。(素晴らしい)
柴咲コウはこれが一番輝いている気がするし後にタランティーノの『キル・ビル』に出演する栗山千明もハマってる。
彼女の「カッチーン…神様このバカ今なんて言った?」とかいう全生徒の中で一番漫画っぽい台詞も面白い。

・安藤政信の演じた自らゲームに志願した殺人マシーン桐山は当初一言だけ台詞があったようだけど安藤自ら台詞は無い方が良いのではと発案したそうでその案が採用され台詞は一切無しになったよう。

そもそも最初は山本太郎が演じた川田という主人公サイドで一番頼れる男の役になりそうだった所を殺しまくる方をやりたいと名乗り出たという。
結果全てが良い方向に出ているように思える。

今も活躍している俳優だらけなこともあり生徒達は個性豊かで錚々たる顔ぶれですが個人的に推したいのはデフォルメされたガリ勉の男子20番、元渕恭一くん。

不意に現れ主人公とヒロインに向かって発砲してきたかと思うと圧巻の台詞!
「X=2a分の-b、プラスマイナス、ルート、b二乗、-4ac!…皆やる気なんだ、いいよ、やってやるよ!生き残って、生き残って!良い高校入ってやるよー!」

台詞が面白すぎて笑ってしまうけれど人間が生きようとしているんだよなぁと考えると切実。
思えばゲーム開始前の教室の段階で彼はキタノに「生き残ったら帰れるんですか」と質問したりおねぇさんが愉快にルール説明するビデオの内容に怒った生徒が騒ぐと「説明が聞こえないだろ!」と一喝。
彼なくしてこの映画は語れないだろう…

見せ場のある人物はボイスオーバーだけでなくテロップまで出てくるので少し恥ずかしくもなる。
特別篇のバスケのシーンは蛇足だと思うけど、典子が見たキタノの夢なんかは忘れ難い。

教師キタノのクッキーの食べ方は真似したなぁ。
ごんす

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