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呪呪呪/死者をあやつるもののkuuのレビュー・感想・評価

3.6
『呪呪呪/死者をあやつる者』
原題 謗法:在此矣/방법: 재차의/The Cursed: Dead Man's Prey
映倫区分 G
製作年 2021年。上映時間 110分。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』やドラマ『地獄が呼んでいる』などのヨン・サンホが原作などを手掛けたゾンビアクション。
呪術により復活した屍である在此矣(ジェチャウィ)たちが、人々に襲いかかる。
監督を務めるのは『ファイティン!』などのキム・ヨンワン。
『女は冷たい嘘をつく』などのオム・ジウォン、『パラサイト 半地下の家族』などのチョン・ジソのほか、チョン・ムンソン、キム・イングォンらが出演している。

『新感染 ファイナル・エクスプレス』でゾンビ・アポカリプスの新境地を開いたヨン・サンホと、『愛の緊急着陸』( 2019 )などハイクオリティなドラマ作品を得意とするスタジオドラゴンがタッグを組み、魔術とKゾンビが融合したハイブリッド・ホラーが今作品。
韓国tvNで放送され、Netflixでも配信された『謗法~運命を変える方法~』( 2020 )の続編。

今作品のヤツらを "ゾンビ "と呼ぶのは少々怪しいかもしれない。
理由はと云うとゾンビの定番と云えば、ノロノロと徘徊しては血肉を求めたり、知能はほぼなく、体は腐っているなどなど、イメージはほぼ固まりきっている。
もちろん、過去にも斬新なゾンビ映画はさまざまあったが。
今作品のヤツらはトリッキーなアイデアを掛け合わせ、驚くべきハイブリッド。
偉大なるジョージ・A・ロメロの作品群から派生し、現在では世界的に一般化した伝染病タイプではなく、呪術で蘇らせた死者たちを使役するというブードゥー教由来のゾンビに近い。
ヤツらの名称も在此矣/ジェチャウィと呼ぶ(ジェチャウィとは、”禍々しい呪術に操られた屍”のことらしい)。
このジェチャウィは全力疾走しちゃうわ、ラグビー日本代表ばりにチームのようにプレイし相手を殺すまで動き続ける。
そして、車も運転しちまう。
嗚呼、ネット番組でディベートもしてたかな。
特殊部隊とガチバトル。
実際、普通の人なら一瞬で餌食になる。
バキバキに新鮮でゾンビ像を覆す“Kゾンビ”是か非か微妙やしゾンビと呼ぶのも微妙。
まだまだゾンビには開発途上なんやなぁ。

扨、今作品は先にも書いたようTVシリーズのスピンオフやけど、このTV番組の前提は、主人公ジニが超能力を持つ10代の少女と組んで人々を裁くというもの。
今作品は、この前提(シリーズ)に詳しくないことが欠点となるかもしれない。
個人的にはTVシリーズは一話途中までしか観てないが今作品は何となく掴めました。
若干のネタバレですが、ソジン (チョン・ジソ) が現れると、嬉しいというよりはむしろこれは誰?ちゅう感じになったのはたしかで、脚本家ヨン・サンホの功績として、ソジンとジヒの関係についてTV番組へのフラッシュバックがあり、ある程度の背景を知ることができる、残りは、自分たちで理解する必要があり、ソジンはTVシリーズを完全に見てないし少々謎。

ジニ自身は何の超自然的な能力を持っていないが、主人公としての本質に欠けてるわけではない。
彼女は、依存ちゅうよりも便宜的な支援をしている。
少人数の撮影スタッフ、警察関係者、現象の専門家の協力を得て、ジニはこの物語のパイプ役となり、彼女の冒険を世界と共有する動画配信チャンネルを持ってる。
これは今作品において重要なことかな。

また、なぜゾンビが企業のビジネスを脅かしているのか、そしてなぜジニが関わっているのか。
後者は映画の後半にならないとテレビシリーズを見てないとわかりにくい。
前者はもちろんひねりがあるが物語の核心を形成している。
ヨンホには明瞭で空間認識能力があり、腐った肉がないことから、普通のゾンビではない。
激昂すると皮膚が溶けて剥がれ落ち始め、右手には奇妙なシンボルが現れる。
まるで外的な力に操られているかのようで、ジニと彼女のチームが調査すべきは別の何かである。現実の世界に戻ると、企業の不正問題がある。
スンイルは製薬会社の会長だが、野心的で冷酷な娘ミヨン(オ・ユンア)が経営している。

テレビシリーズに関連して少し調べると、ジニとソジンが企業の腐敗に取り組むというのが大筋の流れやった。
したがって、今作品のストーリーは、表向きは同じ物語の別の筋と云える。
いわば、超常的な存在や陰惨な怪物が実際に存在しようとも、本当の恐ろしさは人間であり、たいていは権力の座にある、という道徳的な主張かな。

もちろん、これは新しい試みではないが、キム・ヨンワン監督は、ミステリーであり、ホラーであり、犯罪ドラマでもあるこの作品を、十分に不気味でアクション満載の演出で包み込んでいました。
今作品の脚本家であるヨン・サンホは『新感染 ファイナル・エクスプレス』の監督を務めており、ゾンビたちの身体的な巧みさをより明確にするための豆知識。
グレーのパーカーに身を包んだ彼らは、銃声や物理的な攻撃をものともせず、獲物に向かって容赦なく突進する。
ゾンビは、肉を食べることよりも暴力を振るうことにかなり熱心で、呪いの超自然的な糸に焦点を移す大きな原因の一部であり、ジニとソジンが立ち向かうべき別の敵である。
この重複のおかげで、劇的なトーンの不一致はなく、役員室での行動が精神的な復讐と関連しているというありえない考えをいつの間にか受け入れていた。

テレビシリーズをはじめの一歩しか観ていないので、この映画が同じようなものなのか、それとも常識を逸脱したものなのかはハッキリ分からないけど、ウム・ジウォンがジニ役に馴染んでいることは分かりました。
チョン・ジソもソジン役と同じような空間を共有しており、そのキャラを知らない小生目には、曖昧な不吉な印象を与えてた。

中盤と終盤のクレジット・シーンによれば、TVシリーズ第2弾が期待される。
そうでなければ、今作品はファンにとっても初心者にとっても、独立したアドベンチャーとして十分に機能する。
ジャンルがぶつかり合う厄介な作品になるはずだが、この災難をうまく回避しているのは、これらの材料をどのように混ぜ合わせれば観やすく面白いものになるかを製作陣は理解しているんやろなぁ。
TVシリーズを確り観てみようと思える作品でした。
kuu

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