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最後の決闘裁判のYACCOのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
アダム・ドライバー見たさで鑑賞。
史実に基づいているとのことだが、実際の出来事については存じ上げず。
リドリー・スコット監督だからか、マット・デイモンがラッセル・クロウのように見えたが、そんなマット・デイモン演じる武骨で不器用な男カルージュと、アダム・ドライバー演じる美丈夫で優秀だが野心の強い男ル・グリのいわゆる男の矜持の闘いなのだが、この映画の主人公はこの闘う男2人ではなく、カルージュの妻であり、今回男ふたりが闘う原因となるジョディ・カマー演じるマルグリットが主役の映画なのだろうと思う。
リドリー・スコット監督でありながら、脚本はニコール・ホロフセナーと、マット・デイモンそして、ベン・アフレック(ベン・アフレックもピエール役で本作に出演している)となっており、リドリー・スコット監督の迫力のある映像に、この映画の肝ともいえる2人の男と一人の女の心の機微と鬱屈した思いが描かれる。全体的に重く暗いトーンなのも恐らく今作の合わせたものに違いない。
時代が時代ならば、凌辱されることにも耐えなくてはならないなんて、今の世の中では信じられないけれど、史実に基づいているということがそこに重みを感じさせる。
そして、今作は2時間33分という長尺なのだが、カルージュから見た事実、ル・グリから見た事実、そして、マルグリットから見た事実と決闘の結末という3部構成になっており、見ている側が退屈することはない。視点を変えて明かされる事実を見終えた時、おそらく見ている側は皆同じ気持ちで決闘場に臨むことになるように思う。
このテーマの物語が、今こうして映画化されることに時代を感じてしまうのだけれど、男の矜持的なもののために戦う男2人と、人間としての尊厳を守り強く生きようとした女性の姿を見て、私はここまで強くならねばならない世の中だったことが悲しくなった。今の時代の在り方でさえ、こうして多くの人たちが闘ってきた結果なのだろうなと。そんなことを思うのは、自分が女だからなのかもしれないけれど。
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