とりん

オアシス:ネブワース1996のとりんのレビュー・感想・評価

オアシス:ネブワース1996(2021年製作の映画)
4.1
2021年78本目(映画館22本目)

Oasisファンなら誰もが知ってるネブワース公演のドキュメンタリー作品。1日12.5万人、2日間で25万人を動員し、チケット争奪には250万人が参加したと言われ、当時のイギリスの人口の実に約4%がこれに参加したと言われるとんでもない出来事なのである。
このライブがいかに伝説と呼ばれるか、歴史を作ったかが嫌でもわかる内容だった。
当時はまだ音楽なんて知りもしない物心ついたレベルだから、もちろん知る由もないのだけれど、後追いでバンドを知り、もちろんこのライブのことも伝説化していることも知っていた。自分は洋楽に関しては聴き出したのがかなり遅いので、Oasisにどハマりする頃にはバンドはとっくに解散していた。
だからこういう映像は貴重でしかなかった。過去ライブ作品としては日本での来日公演ラストとなった2009年のフジロックは、以前映画館で観たことかある。結局今のところDVD化などはされていない。あの時は109シネマズに観に行ったが、バンド終期だからパフォーマンスは良いレベルではないが、なにより音響の物足りなさに残念でしかなかった。でも今回はCINE CITTA'で、しかもライブ経験のあるCLUB CITTA'監修のスピーカー音響を備えたLIVE ZOUNDでの上映だから、音響に文句のつけようなんてなかった。ライブが始まってから、終始鳥肌立ちっぱなしでしかなかった。

本公演はOasisの単独ライブではなく、サポートバンドも出演しており、それがまた豪華でしかない。The Prodigy、The Charlatans、マニックス、Cast、ケミブラというとんでもない布陣。特にThe Charlatansは直前にキーボードのメンバーが交通事故で亡くなるというハプニングを越えて出演してくれている。それを受けてリアムが「彼に捧ぐ」と言って"Cast No Shadow"を歌ったのも感動的だ。The Prodigyに関しては本作品でもライブ映像が少しだけ出てきて、Oasisを待っていたファンに衝撃を与えたと語られていたが、それよりも今は亡きKeith Flintの姿を観てグッときた。彼も生で観れずじまいだから、こういうのも貴重。

この日のセットリストは年代から考えても言わずもがなのヒット曲のオンパレードと言える内容。しかしオープニングや終盤で必ずと言って良いほどプレイされていた"Rock 'n' Roll Star"が組み込まれていないのはかなり意外である。これには当人たちも振り返って驚いていたほど。だから今回映画で聴けないとは思ってたけど、まさかここで来るかというとこで流れてテンション上がった。
幾度となくハイライトは訪れるけど、終盤の"Champagne Supernova"、"I Am The Walrus"ではメンバーも敬愛するThe Stone Rosesを当時脱退したばかりのJohn Squireが参加するというサプライズも。これにはメンバーもかなりテンションが高かった。

これまでもOasis関連としては、「オアシス: スーパーソニック」(2016)、「リアム ・ギャラガー: アズ・イット・ワズ」(2019)のドキュメンタリー作品がある。その2作品とも本人や親近者や関係者を中心としたインタビューで構成された作品であったけれど、本作は当公演を体感したファンが当時のことを振り返って語るインタビューを中心に構成されているのが、良かった。もう25年も前の話になるから、多少美化されたり神格化されてしまってるところはあるけれど、それを踏まえても当時の興奮や光景がビシビシ伝わってきた。
エピソードはラジオで聴いていたファンだったり、チケット争奪戦に頑張った話などなどあったけど、特に印象的なのは行く手段も考えず取った女性ファンが、特にファンでもない兄に連れて行ってもらった話。実は兄はその数日後にガンであることを告知され、兄妹の2人きりで出かけたのは最後だったから印象的だったという。後はタンバリンの話、そのファンはリアムにライブ中「タンバリンをくれ」と言ったら、「後で行くから待ってろ」と言われた。もちろん彼は冗談と思っていたが、ライブ終わりに本当に降りてきて、タンバリンを渡したのだ。しかも彼が家に帰るとこほでエンドロールというのもまたハイライトである。
当時のイギリス情勢や若者の背景などは全然知らないけど、携帯電話がない頃の話や自分の大好きなライブにかける思いたどは共感できることも多く、エピソードひとつひとつでグッと来るし、そこに流れてるOasisの曲とも相まって泣けてくる。
Oasisの人気絶頂期だからこそのライブではあるけども、ファンあってこそのライブであるし、この構成は憎い。これまでが関係者目線だったからのもあるけど、ファンが作り上げた光景だからこそ、ファン目線というのが素晴らしい。
とりん

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