平野レミゼラブル

愛なのにの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

愛なのに(2021年製作の映画)
4.3
【愛のままに御(み)心でなく御(お)心のままに】
昨年公開された今泉力哉監督の『街の上で』が僕は大好きでして、そのゆるい会話から滲み出るユーモアにフフフと笑い、時折出てくる恋愛哲学に感心しつつニマニマする大切な作品となりました。その中の登場人物に城定イハという女性がおり「映画監督の城定秀夫と同じです」と自己紹介しますが、今回はそんな今泉力哉と城定秀夫(代表作『アルプススタンドのはしの方』)のコラボレーション企画。それぞれが互いの脚本を提供し合って交替で監督を務める「L/R15」の“L”の方の作品(監督:城定、脚本:今泉)となります。

どうやら元々今泉監督と城定監督は個人的にも親しい関係らしく、そんな気心知れた仲だからこそ実現した企画と言えるでしょう。レギュレーションとしては、互いの脚本を提供し合う以外にR-15+のラブストーリーにすることがあり、また一部登場人物(毎熊克哉)や猫(オセロ)は今後公開される“R”の方の『猫は逃げた』(監督:今泉、脚本:城定)とも共通しているため、世界線も同じでしょう。


こちらの内容は古本屋の店主の多田が女子高生から告白されたり、当の多田はかつて振られた女性に未練があって(あと倫理的にヤバイから)断ったり、一方の一花は結婚寸前で婚約者の亮介に裏切られたりの混沌とした恋の四角関係から「愛」とは何かを追求していきます。

まあ、とは言っても何も小難しいところはなく、どこか『街の上で』に通じるゆる~い雰囲気の中でトボけたやり取りが頻発して滅茶苦茶笑える。面倒臭く風変わりな人々を描き出す今泉脚本の面白さが炸裂しまくっています。
また、R-15要素ではピンク映画監督でもある城定秀夫の持ち味が炸裂し実に官能的。この一見ミスマッチな組み合わせによって『街の上で』ともまた違う魅力を滲み出させることに成功しています。

キャストは多田役に『事故物件 恐い間取り』の瀬戸康史。『街の上で』の若葉竜也のような情けないけど共感はできる男像が新境地な気がする。一花役にはゲスの極み乙女。のドラマーでありNetflix映画『彼女』等で女優業も務めるさとうほなみ(ミュージシャンとしての名義はほな・いこか)。脱いでヤる体当たりの演技。お前こそゲスの極みじゃい!な浮気しまくり婚約者の亮介には『いとみち』の中島歩、ウェディングプランナーしながら亮介と浮気している美樹には『ストロボ・エッジ』等の向里祐香。
そして、多田に求婚するブッ飛びJKの岬には『サマーフィルムにのって』や『由宇子の天秤』等の話題作に引き続いての河合優実!!もうこれは、確実に今一番ノリにノッている若手女優と言っても過言ではない勢いですね…!!


いや、本当さっきからしつこいくらい書いてますが、昨年『街の上で』にハマった人ほど本作は同じようにハマってしまう面白さに溢れていて最の高ですよ……!!今泉脚本のセルフオマージュや城定演出のサービス精神も発揮されてるからなのか、明らかに意識しているような設定や場面も多いしね。

一方でそちらにはなかった要素、つまりピンク映画の吟遊詩人(朝日新聞命名)たる城定秀夫の本領発揮のドロドロ部分が、女の子に夢見がちすぎな童貞ファンタジスタ(平野レミゼラブル命名)たる今泉力哉が求める清涼さと相性が悪いっちゃ悪い!!そのため、最初の内は「ゲス不倫いらね。もっと河合優実映せよ」とも思うんですが、不思議とある一定を過ぎるとうまく混ぜ合わさり調和しだします。このR-15+故の奇妙な塩梅がクセになって、これがまた面白いんだよなァ……


こうなってくると3月18日公開の『猫は逃げた』も俄然気になってはくるんですが、3月の観たい映画に挙げていないように(言うてこれ書いてる時は「L/R15」のこと知らなかったんですが)そちらは未だに観賞未定です。
いや「なんで?」って言われても、ホラ、僕単純に猫が嫌いだからさ……あまり猫映画って観る気起きなくって……


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御(み)心でなく御(お)心のままに『愛なのに』感想
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