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イノセンツの小のレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.0
ホラー映画って怖がらせることがメインテーマだから演出に重点をおいて観ようと臨んだら、ホラー感があまりなく、子どもを描くことで大人(親)の危険性を示している作品のように感じた。

子どもとは何か。エスキル・フォクト監督は大人と対比しつつ次のように述べている。

<我々は「子供は純粋で天使にもなれるし、テロリストにもなれる」と決めつける傾向がある。けれど実際、子供たちというのは発達過程にいるというだけで、ひとりの人間であることに変わりないんです。だから、彼らの中にも全ての感情が蠢いている。まさにカオスです。僕が「子供は凄いな」と思うところがまさにその部分。彼らはこれ以上ないくらい感情移入し、純粋に周りの世界に感動して、揺れ動く葉っぱをいつまでも眺めていたかと思うと、次の瞬間には思い切り自己中の人格破綻者にだってなってしまう。同じ人間なのに瞬時に変貌するんです。>

<僕たち大人はそういう気持ちを持っていても、表に出さず抑えてしまう。蓋をする術が身についているから。でも、内に秘めるカオスはみんな持っていて、それを自分なりにコントロールして社会性を保っている。でも子供には僕たちが失った純粋性や柔軟性がある。だから僕たちが普段表に出さないようにしているワガママな感情も隠さないし、容赦なく自己中にもなれるんです。>
(https://horror2.jp/60575)

「イノセンツ」とは、誰しもが持っている<カオス>を表に出す<純粋性や柔軟性>のことだとすれば、確かにそれを<内に秘め><表に出さず抑え>るのが大人だろうと思う。しかし、ここで言う“表”は、社会や他人など家族・身内より外のことを指している気がする。

男の子の母親は<内に秘めるカオス>を普段から子どもに直接向けているみたい。自閉症の子の心が読める女の子の母親は家でメソメソ泣いて子どもを心配させているだけでなく、蓋が外れると<内に秘めるカオス>をやはり子ども向けてしまう。自閉症の女の子の妹は両親の<内に秘めるカオス>が自分に向いてこないか心配する。

子どもの<カオス>に大きな影響を与えるのは親である。他者は自己の鏡であり、親にとって子どもはその最たるもの。子どもの<自己中>は親の<内に秘めたカオス>の表出であることに親は気づかないようにしている。

フォクト監督の親友で『わたしは最悪。』のヨアキム・トリアー監督の解釈は次のようだと言う。

<彼は『我々が自分と違うものを受け入れない』という作品だと受け止めた。自分の中にも暗部があると自覚していながら、それを目の当たりにしてしまうと、排除したくなる。社会が成り立つためには、抑制しないといけないものがある。受け入れられない感情や行ないがある。もし、それに適合できないなら、殺すしかない。><『本当の怪物は誰なのか?』『理想的な社会を作るためには、冷酷でなきゃいけない』>。
<https://natalie.mu/eiga/news/534805>

台詞で「怪物だーれだ」と言う映画があって、ぼんやりと観てしまったけれど、根っこは本作と同じような感じなのかもしれないなあ。
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