【何を探すのか。何を見つけたのか】
インディーズにて『岬の兄妹』という大問題作を撮って注目を集めた片山慎三監督が遂にメジャーデビュー！！『さがす』という検索精度滅茶苦茶低そうなタイトルからお出しされるストーリーは、大阪のドヤ街で「手配中の連続殺人犯を見かけた」と告げた父親が失踪し、父の名を騙る連続殺人犯その人を見つけてしまう娘の捜索劇。この時点でかなりスリリングで見応えのあるサスペンスが約束されているようなもんですが、実際に展開されるストーリーは突如視点が変わったり、何重にもツイストして突き進んでいったりするので予測不可能です。
失踪した父・原田智には『新解釈・三國志』の佐藤二朗。近年では福田雄一監督作品の影響でおふざけが目立つ面白おじさんのイメージが強めですが、今回はコメディ面は成りを潜めて超シリアスな役を見せます。そもそも監督・脚本・出演も兼任した『はるヲうるひと』では徹頭徹尾真面目だったように、おふざけに走らない演技力が本来の魅力な気がするんですがね。
そんな父を探す娘・楓には『空白』の伊東蒼。常に八の字眉を強調する健気な雰囲気が実にイイ。冒頭から万引きした父親を迎えに行く姿は『空白』と正反対の構図ですが、そちらと同じように滅茶苦茶走ります。連続殺人犯・山内照巳は『映画大好きポンポさん』の清水尋也。まさかジーンくんがこんな凶悪な役をやるなんて…！俳優としては初めて顔を見ましたが、一見素朴ながら危うい目つきが怖い。そのほか、謎の女性ムクドリにはドラマ『全裸監督』や『おかえりモネ』で話題の森田望智と若手実力派の起用が目立ちます。
連続殺人犯のモチーフはモロに「座間9人殺害事件」で、そこまで直接見せるワケではないにしろ、被害者が苦しみながら息絶える様子や遺体を解体する様子も生々しく描かれるので、その辺りは注意が必要です。というより、全体的に貧困層や死に関わる人々のディテールが妙にリアルで結構「うへぇ…」ってなります。
しかし、そんな露悪的な側面に反したどこか奇妙な人間味に溢れたキャラの描き方や、滑稽な描写を突如挿入してくる外しがあり、絵面が凄惨で笑うべきじゃないんだけどそれでも思わず噴き出してしまう独特のユーモアにも溢れています。ダークコメディと言うか、カテゴリとしては昨年の『哀愁しんでれら』に近しき偏愛を抱いてしまう問題作。片山監督、商業になっても丸くならないトガった作風で最高です…！！
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何を探すのか。何を見つけたのか『さがす』感想
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