むぅ

わたし達はおとなのむぅのレビュー・感想・評価

わたし達はおとな(2022年製作の映画)
3.7
田中みな実と同じマンションに住んでる!!

いや正確に言うと『ずっと独身でいるつもり?』で田中みな実が演じたまみと今作の主人公が住んでいるマンションが同じであった、おそらく。
自宅の上のフロアに行くために、私はそんなオシャレな螺旋階段をくるくる回りたくないと思った記憶があって覚えていた。
『ずっと独身でいるつもり?』のまみはエッセイがヒットし有名作家という設定だったので、オシャレなお家に住んでるなぁと思っていたのだが、今作の主人公は学生。家賃!家賃はいくらなのだ!とつい余計なお世話で気がそれた冒頭だった。


大学でデザインの勉強をする優実と演劇サークルに所属する直哉。
ある日、優実は妊娠していることに気付き恋人の直哉に打ち明ける。でも優実にはもう一つ直哉に言わなくてはいけない事があって...。


年上だからと言って大人なわけではない、人による。
そう思うようになったのはいつからだろう。
そしていつになったら"年相応な大人"になれるのだろう。
子どもの頃と言わず10年前に自分が想定していた"年相応"より、いつも私は子どもだ。
でも今作の2人がまだまだ"おとな"ではないこと、でもそれぞれに懸命に"おとな"になろうともがいていること、これをクリアしたら"おとな"に近付くという項目がとても"子ども"であること、それらを「うんうん」とか「あーぁ」とか思いながら見守れるほどには"おとな"にはなっていた。
いや、学生時代に観なくて良かった。劇場で発狂したかもしれない。

私も学生時代は直哉と同じく演劇サークル。
煙草を吸いながら演劇論を交わす先輩達がカッコよく見えていた。
そしてよくわからない芝居であればあるほど、何か深いような気がして面白いと言わなくてはいけない空気感に全力で飲まれた。
冷たい、素っ気ないくらいがカッコいい!という時期があった。
優しい人を物足りなく感じた事があった。

今ならこの2人を「どっちもどっち」と思えるが、当時観ていたらどんな感情になるのだろう。
やっぱり発狂一択な気がする。
この2人のような現実にぶち当たった事はないが、確かにそうかもしれないと思わされる"口調"に丸め込まれた事はあったし、自分の手持ちのカードを見せずに相手の出方を待つズルい戦法をとった事もある。

藤原季節、木竜麻生の演技力もあって、中盤なかなかの[グリーンピース戦争]が巻き起こる。
観ていて「いやいやいやいや」と突っ込みたくなるのだが、グリーンピースだからそう思うだけで、その単語が時間やお金の使い方、それこそ子育てや浮気に変わったら"おとな"でもよくある喧嘩に一変すると思うので笑ってはいられない。

何とも言えない映画だった。
でも「俺、俳優よりも脚本家になりたくて」という演劇サークルの後輩の台詞に、えー小劇場の舞台踏む人たちって自分のこと俳優じゃなくて役者って言うと思うんだけどなと小さな事が気になったのと、学生なのにあんなにオシャレなマンション..とひがんだので、まだまだ私も"おとな"への道のりは遠い。
むぅ

むぅ