こうん

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーのこうんのレビュー・感想・評価

4.2
家庭用ゲーム機の隆盛の時代に生まれ落ちたのにゲームにはとんと縁遠い人生でございます。最後に触ったのはたぶん初代のプレステ…というぐらいの距離感。
ただし!幼稚園の年長さんの時分に友人のクリハラ君(金持ち)の家に日参してプレイしまくっていたのが「スーパーマリオブラザーズ」。

それが当時空前のブームだったということはつゆ知らず、小さな世界で暮らしていた私は「なんと面白いピコピコだべっち」とほんとうに毎日ゲームしに行ってました。なんならクリハラ君が歯医者でいない時もお邪魔してクリハラ母の手製のフルーチェなんか頬張りながらBダッシュしてましたよ。
クリハラ君、クリハラ君のお母さん、その節はありがとうございました。

ちなみに我が家にファミコンがやってきて来るのはその数年後のドラクエ3の頃で、マリオとの親交は「スーパーマリオ3」までかな~。その後の拡張していったマリオ世界はCMで観る程度、リオ五輪での…は言うの止しておきましょう。
ま、すっかり縁遠くなってしまったけど“マリオ第1世代”と言っても過言ではないと思いますよ。最初のマリオブラザーズもドンキーコングもプレイしてたしレグイザモのルイージもうっかり映画館で観たし。

そして時は経ち2023年、映画館でさんざん見せられた本作の予告編には「うーん、チャイルディッシュ…」とちっとも心動かされませんで。俺向けじゃねぇな、と。
しかし公開されれば世界中で日本で大ヒットで、そうなると興味を持ち始めるのも人情。おまけに人気のわりに批評家筋の評価が不当に低いみたいなムードも伝わってきて、さらには柳下毅一郎さんの評での軽口が一部で批判の俎上にあがっていたりもして、野次馬根性も含めて興味に火がついちゃいましたね。
重い腰を上げて、大人の丸ピカドルビーシネマ3D字幕上映のセッティングで観てきました。

…ちょっと泣いちゃいました。

今はこんなおじさんですけど心の中にはいまだに16ビット脳の6歳児がいて、あの「♪テレッテッテテッテッ」のフレーズに思わずジャンプしたくなるマインドは活きておりましたよ!

すべてのマリオを網羅しているわけじゃないんでアレですけど、ゲームのマリオ世界になにも足さないしなにも引かないスタンスで正しく娯楽映画化していると思いました。
クリエイティブな野心は持たず、すべての人が持っている(かもしれない)6歳児マインドに向けてストレートに作ってあって、そこが気持ちよかったし、シンプルな面白さだけの90数分がゲームのマリオ世界に入ったようでした。

ストーリーからキャラクターデザインから劇伴からCGのクオリティまで、ゲーム→娯楽映画の正しいアダプテーションじゃないですかね。

特にわたしは、人間の肌感、塩ビ人形のような質感が絶妙だと思いましたかね。リアルな肌だとダメだし作り物っぽくてもダメだし、体温があって親しみやすい質感にこだわってたくさんのトライ&エラーがあったのではないかと想像しましたし、そのへんの惜しまぬ努力とセンスと任天堂のハンドリングがあり、この娯楽作は出来たのではないかと思っております。
ゲーム音楽からの映画劇伴もよかったね。ピコピコ音をうまいことミックスしつつ感情豊かなサントラになっていて…とくにわたしは、「くるぞ、くるぞ…!」と待ち構えまくったクライマックスの無敵スター状態の音楽にしてやられました。あそこ最高ね。うっかり泣いてしまいました。あはは。

それからドンキーコングがめっちゃセス・ローゲンっぽいと思ったらセス・ローゲンでしたね。たぶん、ヨッシー登場の続編に加えてドンキーコングもピーチ姫もスピンオフ作る気だぞ。

ひとつだけ文句があるのはルイージね。
意気地の足りない弟で囚われの姫役なんですけど、「スーパーマリオ2」の設定である大ジャンプを彼の開花する才能としてマリオのピンチを救う、というのが欲しかったかなー。文句というか要望でしたね。

ま、シンプルに面白かったし、それ以上でも以下でもないし、それはいいことじゃないでしょうかね。

そうそう、冒頭のクッパ城(?)の描写は「スターウォーズ」エピソード4冒頭を模していると思うんですけど、どうなんでしょう。
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