レッドアップルさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

雪合戦(1896年製作の映画)

-

ブレッソンのやり方ではきっと到達できないであろうシネマトグラフ。

ブロンド(2022年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

劇中のモンローの『ローズマリーの赤ちゃん』的錯乱が、そのまま映画自体の史実を無視した演出の錯乱と共鳴しているように思えた。きっと、彼女がブロンドを偽ったように、本作『ブロンド』もまた何かを偽っている。>>続きを読む

ラルジャン(1983年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

カフェの店員を突き飛ばす場面、ハリウッドでは”俳優の顔”のクローズアップが求められるが、ブレッソンは”モデルの手”をヨーロピアンビスタで余すことなく捉える。
もともと絵を描いていたブレッソンにとっては
>>続きを読む

PASSION(2008年製作の映画)

4.0

『親密さ』にもつながる暴力と選択の講釈。どちらも結局は虚しく終わる。

あれだけ言葉を尽くす作家性の監督が、すべてをキスで締めくくる。「何も見えていない」労働者たちの恋愛。

ハロウィン KILLS(2021年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ハロウィンがハロウィンを骨の髄までしゃぶり尽くしてるというか、そういう意味でハロウィンがハロウィンを殺しているというか。だからマイケルは殺されれば殺されるほど強くなる。ドリアン・グレイ。

水の中のナイフ(1962年製作の映画)

3.9

寓話と呼ぶには具体的過ぎる海上の生活。関係は生活の体験を介して映される。ゆえにダレることがない。映画力クソ高いポランスキー。

クレアのカメラ(2017年製作の映画)

3.8

ホン・サンスは多分、濱口やロメール以上に形式の中を満たすものに執着がないんだろう。

ミストレス・アメリカ(2015年製作の映画)

4.0

主人公が小説の件で責められる場面は、芸術家としてのバームバックの自己反省としても捉えられるが、『私は最悪。』みたいな、ああいう"正しい”批判を加えてくる奴の軽薄さもちゃんと皮肉ってて、いい塩梅。

>>続きを読む

ミスター・ガラス(2019年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

個人の信じた物語が世界を覆い尽くすセカイ系的価値観。膨らみすぎた自我が社会を牛耳る奴らに取って代わる。でも結局ヒーロー対ヴィランの図式だから、社会の本質はあまり変わらないだろう。同じことを繰り返す。>>続きを読む

木と市長と文化会館/または七つの偶然(1992年製作の映画)

4.3

文化会館はV2ロケット。それを「小さなもの」が妨げる構図。
論争のテーマとなる政治的な問題は今にも通ずる強度を持つが、それは偶然を描こうとする形式の中を満たすための内容の一例でしかない。結局偶然とか因
>>続きを読む

都会のアリス(1973年製作の映画)

4.0

風呂の栓を抜き、そこから水が流れていく時間。店でアイスを頼み、そこからそれが溶けていく時間。電車に乗り、過ぎて行く景色にみる時間。
レイジーで居ることでしか、時間は捉えられない。そしてレイジーで居るた
>>続きを読む

生きる(1952年製作の映画)

4.2

個人的には、上司全員にあだ名つけて辞めていく彼女の姿勢を見習いたい。ウサギのおもちゃを作る工場のライン作業の創造性に対する視線が優しい。そこにいる生活者は確かに本物なわけだし。

「あの人のあの熱意が
>>続きを読む

パリはわれらのもの(1961年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

今と違う、一夜の革命を信じていた時代。
陰謀に囚われ、さらにそれに加担した主人公の兄を殺してしまうあの女の優しさや余裕のなさ。和田まんじゅうが言うところの、「こうなっちゃってる」状態。
自由を求めてい
>>続きを読む

エージェント・マロリー(2011年製作の映画)

3.9

突発的にアクションを始めることで、緊張感が0から100に一気に跳ね上がる感じだったり、戦闘の初動のトリッキーさだったり、意外にも『ベイビーわるきゅ〜れ』を思い出す。
『ジョン・ウィック』よりさらに静的
>>続きを読む

荒野の女たち(1965年製作の映画)

4.4

『三人の名付親』でめちゃくちゃ宗教的な寓話をやっていたジョン・フォードが、キリスト教にもアメリカにも中国にも英雄行為にもファシズムにも中指を立てて死んでいく。
最後の最後、「英雄なんてホントはこんなも
>>続きを読む