風の旅人さんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)

4.0

ゾンビ映画の撮影中に本物のゾンビが現れるというありふれたあらすじからは想像できない面白さ。
何を書いてもネタバレになるので、内容については触れないが、一度でも創作に携わったことがある者なら感動間違いな
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リアリティのダンス(2013年製作の映画)

3.5

「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」
(村上春樹『ノルウェイの森』)

当初息子アレハンドロのものと思われた物語は、中盤から父ハイメのものへと転化する。
ハイメは無神論者の共産主
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オーシャンズ8(2017年製作の映画)

3.5

女優陣の存在感に対し(中でもケイト・ブランシェットの「女王様」感が素晴らしい)、物語は平板で退屈だった。
オープニングの仮出所したデビー(サンドラ・ブロック)が返品と称して万引きする手口に感心したのも
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ミッション:インポッシブル(1996年製作の映画)

3.5

大ヒットシリーズの記念すべき第一作。
その後の作品の派手な展開からすると、非常に地味。
アクション要素は少なく、スパイ映画の王道的展開を踏襲している。
イーサン・ハント(トム・クルーズ)も若く、現在の
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ラストミッション(2014年製作の映画)

3.5

どんなに凄腕のスパイでも娘の前では一人の父親に過ぎない。
娘とのコミュニケーションは敵を殺すよりも難しい。
本作は脳腫瘍で医師に余命三ヶ月と診断されたCIA諜報員イーサン(ケヴィン・コスナー)のパーソ
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君がいた夏(1988年製作の映画)

3.5

映画としての出来は決していいとは言えない。
父親の交通事故死とケイティ(ジョディ・フォスター)の自殺を並置したために、散漫な語り口になっている。
しかし一つ一つのエピソードは印象深く、ノスタルジーを感
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複製された男(2013年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

誰もが別の人生を歩みたいという潜在的欲望を持っている。
もし自分と同じ顔と声を持つ者がいたら、入れ替わることが可能なのではないか。
結婚生活に飽き、浮気願望がある男は、もう一人の自分を複製する。
秘密
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ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018年製作の映画)

4.5

シリーズ集大成。
「世界を救う」任務と「目の前の一人を救う」ことを天秤にかけ、後者を優先させるイーサン・ハント(トム・クルーズ)はスパイとして失格かもしれない。
しかしそれがイーサンの人間的魅力になっ
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Mr.インクレディブル(2004年製作の映画)

4.0

スーパーヒーロー保護プログラム(その強大過ぎる力故に、国家の脅威になりかねないスーパーヒーローの活動を禁止する法律)が施行された後の世界という設定で、「善悪の彼岸」を描いた傑作(『ダークナイト』『ウォ>>続きを読む

インクレディブル・ファミリー(2018年製作の映画)

3.5

現実では前作から14年の月日が流れた。
当時子供だった者も大人になった。
しかしフィクションは時間を超越し、前作と地続きの作品を作ることを可能にする。
そこには懐かしい世界が広がっていた。
前作はタイ
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DEMONLOVER デーモンラヴァー(2002年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

産業スパイの話と思いきや、一筋縄ではいかないのがアサイヤスの映画で、デーモンラヴァー社の違法な拷問サイト「ヘルファイア・クラブ」の秘密を知ったディアーヌ(コニー・ニールセン)が、しだいにアイデンティテ>>続きを読む

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)

4.5

幼い頃に父親から虐待を受け、軍隊時代に戦場で過酷な経験をしたジョー(ホアキン・フェニックス)は、トラウマとPTSDを抱え幻覚に悩まされていた。
ある日ジョーは失踪した議員の娘ニーナ(エカテリーナ・サム
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灼熱の魂(2010年製作の映画)

4.0

現代の神話。
母ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)の遺言により、公証人ジャン・ルベル(レミー・ジラール)から、姉ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)には父に宛てた手紙、弟シモン(マキシム・ゴー
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レディ アサシン(2007年製作の映画)

3.5

うなじに「23(enigma)」という数字のタトゥーを彫ったサンドラ(アーシア・アルジェント)の登場シーン。
ただならぬ色香を漂わしたサンドラに、マイルズ(マイケル・マドセン)は目を奪われる。
二人は
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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

フロリダの魔法の国ディズニー・ワールドのすぐそばにある安モーテルで、その日暮らしをする親子の日常を描いた映画。
紫色をしたその名もマジック・キャッスルと名づけられた安モーテルは、サブプライム住宅ローン
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フローズン・リバー(2008年製作の映画)

3.5

貧困から犯罪に手を染めざるを得なかった二人の母親の物語。
二児の母であるレイ(メリッサ・レイ)は、ビンゴ会場で新居の購入費用を持ち逃げした夫の車を発見する。
しかしそれを運転していたのは、原住民(モホ
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ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)

4.0

誰もが唯一の同じ「物語」を信じ、それ以外の物語を排除する社会は生きにくい。
「ブリグズビー・ベア」は決して完成度の高い物語ではないし、そのキャラクター・デザインは「パクリ」と言われても仕方がないレベル
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静かなる叫び(2009年製作の映画)

4.0

無駄を削ぎ落とし、必要最小限の情報で、理工科大学(原題『Polytechnique』)で起きた銃乱射事件の全容を加害者と被害者と第三者の視点から浮かび上がらせた傑作。
加害者の男性(マキシム・ゴーデッ
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チャイナ・ムーン(1994年製作の映画)

3.5

「魔性の女 白い肌に秘められた殺意」という火曜サスペンス劇場のようなサブタイトルが安っぽいが、なかなか面白かった。
レイチェル役のマデリーン・ストーの美しさに魅了される。
「チャイナ・ムーン(血の月)
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オンリー・ゴッド(2013年製作の映画)

3.5

赤と青のネオンカラーに彩られた暴力的な世界に魅了される。
ジュリアン(ライアン・ゴズリング)は表向きにはボクシングジムの経営をしているが、裏では麻薬の密売をしている。
ある日兄のビリー(トム・バーク)
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世界でいちばん長い写真(2018年製作の映画)

3.5

初めて結婚式を効果的に使った映画に出会った。
結婚式は誰が主役でもどれも似たり寄ったりで、映画の出来事になりづらいのだが、今作は新郎と招待したカメラマンが誰かを明かさず、回想から物語を構築している点が
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ドライヴ(2011年製作の映画)

4.5

ピンクのフォントで表示されたクレジットタイトルが鮮やかにオープニングを飾る。
しかし物語はそこから想像されるような甘美なものではなく、暴力的で悲哀に満ちている。
静と動、緩急の変化が絶妙で、100km
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ボディ・ハント(2012年製作の映画)

3.0

「タンクトップ映画」として有名な本作。
ジェニファー・ローレンスの肉体を愛でる映画なのかと思いきや、ただ単にタンクトップなだけで、セクシーなシーンもなし。
期待外れだった。
サスペンスとしてもホラーと
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閉ざされた森(2003年製作の映画)

3.5

レンジャー部隊の特殊訓練中に起きた殺人事件を調査するために、元レンジャー隊員で現在麻薬捜査官のトム(ジョン・トラボルタ)が呼ばれる。
車から降りると、股間に手をやり、位置を直す一見冴えない男。
女大尉
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カサブランカ(1942年製作の映画)

4.0

「Casablanca」という言葉が持つ甘美な響き。
スペイン語で「白い家」という意味だが、イルザ(イングリッド・バーグマン)のイメージはカサブランカの花に重なる。
神秘的で高貴な美しさに魅了される。
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勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

3.5

自動車泥棒を生業とするミシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)は、盗んだ車の運転中に白バイ警官に見つかり、咄嗟に拳銃で射殺してしまう。
ブレーキもバックも知らない男は、ただ目的(未来)もなく、現在を刹那
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気狂いピエロ(1965年製作の映画)

3.5

過去を捨て、目的(未来)もなく、逃避行する男女。
文学(言葉)を愛する男と音楽(感情)を愛する女が対比される。
「フェルディナン」という名前は、フランスの作家「ルイ=フェルディナン・セリーヌ」から来て
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シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)

3.5

美術と衣装がカラフルでお洒落だ。
中でもピンク(暖色)とブルー(寒色)の組み合わせが印象的で、人生の悲喜劇を表しているようだった。
雨が降る中、色とりどりの雨傘が映るオープニングと、雪が降る中、ギィ(
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羊と鋼の森(2018年製作の映画)

3.5

「調律師」という普段我々が接することのない職業に焦点を当て、説明的台詞を極力廃し、映像と音楽の力だけで表現しようとした試みは評価できる。
そしてそれは半ば成功している。
しかし佐倉姉妹(上白石萌音、上
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レディ・バード(2017年製作の映画)

4.0

髪を赤く染め、自らを本名ではなく、“レディ・バード”と名乗る痛い女子高生の青春物語。
オープニングで母親(ローリー・メトカーフ)と口論になり、突然走行中の車から飛び出す“レディ・バード”(シアーシャ・
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キスキス,バンバン(2005年製作の映画)

3.0

どこか既視感のある作風だと思ったら、監督が『ナイスガイズ!』と同じだった。
ダークな世界観に笑いの要素を入れたハードボイルド・コメディ(各章のタイトルがレイモンド・チャンドラーの小説から取られている)
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コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団(2016年製作の映画)

3.5

予想以上に「くだらない」(Wコリーンの口癖)映画だった。
コリーン・コレット(リリー=ローズ・デップ)とコリーン・マッケンジー(ハーリー・クイン・スミス)はコンビニでバイトをするヨガ好きの女子高生。
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万引き家族(2018年製作の映画)

4.0

『リメンバー・ミー』が血の繋がりを基にした保守的な家族像を提示したとすれば、本作は血の繋がらない疑似家族を通して、「家族とは何か?」という問いを突きつけてくる。
いつ崩れてもおかしくない束の間の関係で
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デッドプール2(2018年製作の映画)

4.0

様々な先行テクストへの言及、観客を巻き込むメタ的な語り、善と悪が同居したトリックスター的な振る舞い。
(個人的に)デッドプールほど魅力的なヒーローはいない。
このシリーズは映画通ほど楽しめる小ネタのオ
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ファントム・スレッド(2017年製作の映画)

3.5

オートクチュールのドレスのデザイナーに「理想の身体(マネキン)」として見初められた田舎のウェイトレス。
玉の輿に乗れると喜んだのも束の間、待っていたのは「人間」としてではなく、「物」として扱われる地獄
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恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)

4.0

若いっていいなぁ、と近藤店長(大泉洋)に年齢の近い私は、橘あきら(小松菜奈)を眩しく思った。
歳を取れば取るほど可能性は狭まっていく。
若い時に持った夢や希望はいつしか片隅に追いやられ、現実的な生き方
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