ひろさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

エル・スール(1982年製作の映画)

4.8

どうしたらこんな傑作が撮れるのだろう。

冒頭、真っ暗闇からだんだん明るくなると、寝室だと分かり、部屋の外から夫を捜す妻の声や足音が聞こえてくる。主人公が起きて、枕の下に、父親の振り子を見つけて涙を流
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

4.7

自宅で観るなら、音量を上げて観るべき映画。
汽車の音、時計の音、足音、風の音、ミツバチの羽根の音が、映画を組み立てている。
姉妹が2階の寝室のベッドで騒いでる音が1階で聴こえていたり、父の足音が聞こえ
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フライト・ゲーム(2014年製作の映画)

4.6

結論から申し上げると、本作は傑作だ。
リーアム・ニーソンが乗客を守ろうとする動機は何も無い。動機が無いから映画が止まらない。
「保安官だから」という以外の理由が無い。だからこそブレない。
あと、小道具
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扉の陰の秘密(1948年製作の映画)

4.5

スタンリー・コルテスの生み出すショットに感激しっぱなし。懐中電灯を手に歩くシーン、霧に包まれた木々を走ったり、裁判シーンでの陪審員の顔が影で塗りつぶされてたり、終盤の煙も。構図も照明も見応えアリ。

ノスタルジア(1983年製作の映画)

4.4

物語る事を拒否しているようでいて、しかし、「故郷」や「過去」への想いは見えてくる不思議さに囚われ、迫り来る美しいショットに打ちのめされる。
演説シーンでの人の立たせ方はアンゲロプロスさながらで面白く、
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泣き濡れた春の女よ(1933年製作の映画)

4.0

清水宏じゃないみたい。横移動撮影どころか、固定が多いし、カット割りも多い。真っ暗な室内で、月明かりによる黒いシルエットだけが映る所もフィルムノワールみたいで、清水宏のイメージとは異なる。
屋根の雪が落
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さらば、愛の言葉よ(2014年製作の映画)

3.0

想定の範囲内のゴダール。ただ3Dになっただけ。水を綺麗に撮るのと、「右目と左目で別のものを映す」というのをやりたかっただけなのではないか。
と言いつつ、また観たい。もちろん3Dで。3Dでなければ意味が
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海街diary(2015年製作の映画)

4.2

綾瀬はるかが、広瀬すずと一緒に暮らす事を決めた理由が無い。さらに、同居を提案された広瀬すずが賛同する理由が無い。
描かれているのは見事に行動のみで、行動を起こす理由が無い。本作で要となる「同居」を、説
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港の日本娘(1933年製作の映画)

5.0

ドリーショットが美しくて素晴らしい。ドリーが登場人物の感情を盛り上げる。車が並んでいる前を横移動する場面、及川道子と井上雪子が再会した後の屋外から窓を左へ横移動撮影する場面など、あまりの素晴らしさに息>>続きを読む

母情(1950年製作の映画)

5.0

「自分が結婚する為に、我が子を他人に預ける」という行為を、本作では「仕方がない」と、主人公の周囲は感じている。これは現在との感覚をズレを感じる。
したがって、いま観ると「身勝手な母の話か…?」と思って
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しいのみ学園(1955年製作の映画)

4.4

倫理的に正しい事をひたすら見せられるので、感傷的ですらあるのだが、清水宏はとにかく「映画」として面白い。
宇野重吉の長男が、盗みの疑惑をかけられ、落胆して帰宅した時の室内を動くカメラ。画面手前で香川京
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巨人と玩具(1958年製作の映画)

4.3

とにかく展開が速い。増村保造の作品の中でも特に台詞の速度が速い。
序盤、山茶花究が次から次へと喋りまくって状況説明をする。説明台詞は本来、会話のテンポが乱れがちで、映画では良くないものだけど、本作はこ
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NINIFUNI(2011年製作の映画)

3.6

風車(?)のカットの次の25カット目で、宮崎将の視線の動きから悲しい決意が見て取れる。
練炭に火を点けた直後の宮崎将の表情の素晴らしいこと!!
宮崎将は天才だと思っているのだが、何と言っても、宮崎将は
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一条さゆり 濡れた欲情(1972年製作の映画)

4.6

ステージでのカラフルで淫靡な照明もさることながら、伊佐山ひろ子がローソクショーの練習をする場面での光や、伊佐山ひろ子が日傘をさして歩くシーンのカラっとした光、終盤で伊佐山ひろ子が抱えられて画面奥へと進>>続きを読む

炎のごとく(1981年製作の映画)

4.5

冒頭、現在と過去(菅原文太と倍賞美津子が出会うキッカケ)をカットバックで見せて行く異様さに戸惑うが、こうやらずに過去を描くと150分超えてしまう。したがって、これは上手い。
現在の方で、高所恐怖症の菅
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惑星ソラリス(1972年製作の映画)

2.1

165分の無駄遣い。長回しが何もドラマを生まない。長回しのおかげで「芸術性」があるように見えるだけ。
序盤で、突然雨が降る描写があるものの、その雨の降らせ方がとても雑だった。

愛に濡れたわたし(1973年製作の映画)

3.8

宮下順子の存在に吸い込まれて行く。迷宮へ放り込まれる。そして、最後まで謎は解けない。『ゴーン・ガール』みたいな説明映画にならないタフさ。
宮下順子が床でウネウネ動く姿がキラキラ撮られているだけで良い。
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カップルズ(1996年製作の映画)

4.5

感傷的になる手前で次へ行く。女が泣き喚こうが、ホンコンがアンジェラ達から同じ事をされて泣く時も、リトルブッダとルンルンが言い争った時も、感情が爆発してるのにそのまま放置しており、周りがフォローする描写>>続きを読む

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)

2.8

ライバル的な敵の狙撃手との戦いのドキドキはあるものの、他のドキドキは無い。
屋上のシーツや砂埃の中で行われる銃撃は面白いが、そこしか面白くない。
ベッドでシエナ・ミラーがブラッドリー・クーパーに馬乗り
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ギャング(1966年製作の映画)

4.3

オープニングの脱獄からカッコいいが、前半、殺人現場で警視がペラペラ喋る長回しにも心を奪われる。
マヌーシュとアルバンを襲いに来た2人組を殺すのを、車内でギュが「アクセルを踏め」と言ってアルバンが加速し
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紅顔の密使(1959年製作の映画)

4.0

大川橋蔵と一条珠実の、出逢い〜行動を共にするまでのひと時が上手い。
大川橋蔵が彼女を見つけて、ちょっと話して、無言のカットバックだけで、大川橋蔵は彼女を一緒に連れて行く決断をする。映画に「行動の説明」
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回路(2000年製作の映画)

3.8

部屋で麻生久美子が画面手前でお茶を入れ、画面奥で有坂来瞳が窓を背に突っ立っているショットにおいて、有坂来瞳の後ろで揺れるカーテンの醸し出す"異界感"。麻生久美子の居る画面手前と有坂来瞳の居る画面奥で、>>続きを読む

自由が丘で(2014年製作の映画)

3.7

加瀬亮から日々送られて来た手紙を落とし、バラバラになったまま拾い集め、そのままの順で読み進めるから、出来事の時制がバラバラ。こんな手法を使ってもホン・サンスはいつものまま。
1枚だけ取り残された手紙に
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妖刀物語 花の吉原百人斬り(1960年製作の映画)

4.4

ラストシーンの、桜が舞う中での斬りっぷりは劇中で最高の美しさを誇るが、本作は全編を通して美しい。
美術と衣裳が美しくて凄いんだけど、それよりも、終盤のあるシーンで、主人公が帰って来ると、女が暗闇の中で
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バンクーバーの朝日(2014年製作の映画)

3.3

カフェで高畑充希が皆に向かって語るシーンで、カットを割って、彼女の寄りのカットになり、涙が流れるのをしっかり見せてしまう説明根性が、どうしても受け入れられず、これが加藤泰なら、高畑充希を画面手前に、勝>>続きを読む

櫛の火(1975年製作の映画)

3.8

時間の流れを無視し、過去と現在を繋いでいる為、何が何だか分からない。分からないから物語を追うのを諦める。
神代辰巳の作品を観る度に、相米慎二は神代辰巳をそのまま受け継いだ男だと思ってしまうのだが、本作
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恋文(1985年製作の映画)

4.2

序盤、真っ赤な服を着てベッドの上で座る倍賞美津子を見て、萩原健一が「辛子明太子がヨガしてるのかと思った」と冗談で言い、萩原健一のアップと倍賞美津子のアップでカットバックにより、空気がガラっと変わり、倍>>続きを読む

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)

2.2

画面が暗いだけで「深刻さ」を漂わせるのを「あざとい」と見るかどうかで、作品の評価が変わるとは思うが、光と影でもっと遊べば、とても良くなったのではないか。
ミステリー映画は元々、好きな類ではなく、ずっと
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周遊する蒸気船(1935年製作の映画)

4.5

アン・シャーリーが牢屋に居るジョン・マクガイアに会いに行った時、周りに居た囚人達が立ち去って、2人の空間になる。この美しき不可侵領域。
後半のあるシーンで縄を投げてから、投げに投げまくる。色んな物を投
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ネネットとボニ(1996年製作の映画)

3.5

両親の離婚によって、離れて暮らす事になった兄妹の話。
兄の住む家に妊娠した妹が来て、兄は鬱陶しそうに嫌がっていたのが、次第に妹を受け入れて行くのだが、その心情変化が掴みにくいのが妙に面白い。
明確な和
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インターステラー(2014年製作の映画)

2.4

音楽で煽りまくる鬱陶しさだけでも無ければまだマシかとも思ったが、音楽で煽らないともっと悲惨な事になっていたんじゃないかとも思う。
同じ宇宙モノで言うと、『ゼロ・グラビティ』の方が単純に"宇宙"で遊んで
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「女の小箱」より 夫が見た(1964年製作の映画)

4.4

増村保造は『曽根崎心中』でもそうだったが、登場人物の視線がどこかへ行ってる。登場人物同士が全然目を合わせない。冷めきった夫婦の川崎敬三と若尾文子が目を合わすのは口論する時だけ。川崎敬三の敵となる田宮二>>続きを読む

赫い髪の女(1979年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

冒頭、トンネルを歩いてくる構図からカッコイイ。
男が女に、女が男に「愛してる」と言わせて、その登場人物が相手を愛してる状況であるのを観る側に伝えるのは簡単だろうが、愛を"描く"となった時にはそうでない
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接吻(2006年製作の映画)

5.0

過去作『UNloved』(脚本:万田珠実、万田邦敏)もそうだったが、登場人物の台詞が論理的で感心すると同時に、どこか不自然な言葉でもあり、不自然な台詞であっても俳優が不自然に発していて、さらに俳優は決>>続きを読む

静かなる男(1952年製作の映画)

4.5

ジョン・ウェインとモーリン・オハラが出会って、障害となる兄が居て、和解して、また兄との確執が再燃して、2人が離れて、争いがあって、和解して…と、ひたすら楽しい映画だ。
ウェインとオハラが出会った時の2
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UNloved(2002年製作の映画)

5.0

森口瑤子演じる光子は、平凡な現状に満足しており、社会的地位向上を当然の望みとして考える仲村トオル演じる勝野と松岡俊介演じる下川は光子の考え方を理解出来ない。
『月曜から夜ふかし』でマツコ・デラックスが
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