公園のベンチに座っていると突然ジョージがやってきて隣に座り、おもむろにギターを取り出し、あの優しい微笑みで自分に向かって歌いかけてくれる。
ジョージの歌を聞いていると、いつもこんな楽しい想像が胸に湧い>>続きを読む
Goodbye,South,Goodybyeという原題も良いけど、「憂鬱な楽園」と名付けた邦題のセンスも素晴らしい。
というのも、本当に「憂鬱な楽園」と言いたくなるくらいに、終始気怠い。
この気怠さは>>続きを読む
突如現れた”婚約者の友人”アドリアンの正体を巡るミステリーとしても面白かったけど、鑑賞後に尾を引くのはマネの絵「自殺」を前にしてつぶやくアンナの台詞。
墓地でアンナがヴェルレーヌの詩「枯葉」を、横に>>続きを読む
スイスで教師をしている初老のライムントが偶然出会った本に導かれ、リスボンへ旅立ち、その本の著者の半生を追っていく物語。
原題は「Night Train to Lisbon」。
まるで自分の失われた人>>続きを読む
ムッシュかまやつ「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」でその名を知り気になりつつも出演作を見ることがなかったジャン・ギャバン。さすが、歌にされるだけあって、タバコを吸う姿が異常にかっこいい。激シブ。
「小栗旬と3人の女たちなのか?」と訝ってしまうほどに、太宰は見えてこなかった。感情的に台詞を吐き捨てるシーンなどは完全に小栗であった。
きっと多くの人が「太宰ってこんなに冷たくないよなぁ、もっとへりく>>続きを読む
「ゲイカップルが子供を引き取って育てようとする物語」と一言で説明すると名作「チョコレートドーナツ」と同じになるけど、その内容は似て非なるもの。
何というか、「チョコレートドーナツ」に感じられるような切>>続きを読む
「クズ」について考えさせられる。
僕が今日本で最も好きなクズ、お笑いコンビ空気階段の鈴木もぐらはギャンブルと風俗をやめられず借金600万円をこさえたりして、本作の主人公と大体において一致するのだけど(>>続きを読む
誕生日プレゼントにコアラのマーチを渡されてはしゃいだあげく気が大きくなってメガネを交換しようって言い出す女と、そもそもコアラのマーチをプレゼントする男。
今泉力哉監督作品に登場する男女の狙いすぎてない>>続きを読む
子供達の垢抜けない演技すらも懐かしく心地いい。
90年代日本のノスタルジアを一手に引き受けたZARDによるエンディングテーマに心は大号泣。
誰にとっても少年時代はいつまでも光り輝く宝石のようなもので、殊に芸術家達にとっては無垢な美しきものとして一層大切に扱われる。
狭いアパートの部屋で家族4人。誰かが歌い出せば、必ず皆もそれに合わせる。>>続きを読む
ジェラール・フィリップ目当てで鑑賞。
「ファウスト」を下敷きにしつつも、小難しさを端折って、仕立て上げた娯楽映画といった感じ。
若返ったファウスト博士がその若き肉体を堪能するくだりが痛快。
上着を片手>>続きを読む
ゴッホ伝記映画の決定版。
世界の美しさを捉えるためゴッホは命を削り死に物狂いで筆を動かす。
彼は恍惚とし、自然と一体となる。
しかし自然から離れ町へ帰るとき、彼にはもはや孤独しか残らない。
落伍者の>>続きを読む
フェリーニの故郷リミニ地方を舞台に繰り広げられる、人生の美しさをふんだんに詰め込んだような、半自伝的・人生讃歌映画。
タイトルは「私は覚えている」という意味のリミニ地方の方言「エム・エルコルド」が由来>>続きを読む
チャップリンは本作においても「人生捨てたもんじゃないよ」的な、何があってもそれでも生きていくことの美しさを、2時間20分で余すことなく繰り広げている。
自殺未遂を図ったバレリーナのテリーと、かつて人>>続きを読む
ジオラマ、ヘビメタ、ラジオ
という非モテ3要素にどっぷりのフーシ。
映画では一切登場しないアイスランドの広大な自然を想像すると、自室でうつむきながらジオラマ作りに勤しみ、車のラジオでDJが自分のために>>続きを読む
とても太刀打ちできないほどの悪意を描くことの多いダルデンヌ兄弟だけど、本作では(きっと日本においてより身近な)時として悪意よりも人を絶望に陥れるような無関心のはびこる世間と、その中でもわずかに確かに存>>続きを読む
大学生のときに中古のVHSで買って何度も観た。
その後ヴィンセント・ギャロの音楽や絵画に虜になり、本作のことはしばらく忘れていた。
しかし、久しぶりに観てみると、音楽や絵にみられるようなギャロの圧倒的>>続きを読む
ある少年の”同性愛矯正セラピーの”告白。
信心深い国、家庭でこそ、間違った人間を正すためなら「神のために」暴力的な方法をとるということの一つの例。
涙をながす母を見て矯正セラピーへの参加を決意するジャ>>続きを読む
家族ゲームという不気味なタイトルにとてつもない説得力を与える、松田優作の存在感。
しげゆきのいじめではなく無駄に友情が垣間見える謎の関係が腑に落ちなかったり、お兄ちゃんもお母さんもそれなりに描かれな>>続きを読む
アイルランド独立戦争と内戦を描いた映画。
自由を得るために、愛する人を守るために、
敵を倒すしかないという血生臭い思想。
ケン・ローチが観客に見せようとする現実はいつもこの上なく残酷だ。
会社の同僚が最高。特にギイ。
数年前に観たときはバッドエンドだと思った覚えがあるけど、今回見直してみるとこれはハッピーエンドなのだと思い直した。
ミシェル・ゴンドリー映画特有の、やるせない寂しさの残る>>続きを読む
偶然出会い逢瀬を重ねることになった15歳のマイケルと年上のハンナの一夏と、その後の二人の運命を巡る物語。
はじめから妙に胸をざわつかせるハンナの表情と佇まい。
その理由がわかるにつれてやりきれない思>>続きを読む
このジャケットとタイトルに長い間惹かれていたけど、まさかそういう意味だったとは。粋だなぁ。
この映画で登場する詐欺の手口の数々、当時真似した人絶対いるだろうな、、
マリファナやって踊り狂った矢先に、座り込んで真剣に悩み相談。
せめて本気なのかギャグなのかだけでも掴もうとしていたら97分が過ぎていた。
平凡な高校生の退屈な日々。
そんな日々でも何故かたまには、いつまでも忘れられないような特別な瞬間は誰にでも訪れるもので、そんな輝ける瞬間を自然に切り取って映画にできる岩井俊二は本当にすごいなと、本作を>>続きを読む
タイプライターを打つロビーとセシーリアが、タイプライターの音の中でリズミカルに交互に映される序盤から一気に引き込まれる。
この場面にしても、ダンケルクでの長回しにしても、この時代への懐古と再現だけに終>>続きを読む
頭が良すぎるが故に大学からはじき出された癖あり頭脳者たちが合法のぶっとび麻薬を作り出して丸儲けしようとするクライム・コメディ。
この設定だけでも面白くて息を飲んで展開を見守っていたけれど、終着点にすこ>>続きを読む
ジニーが公衆電話から電話をかけるときの無言の表情。
そしてその後、責め苦を負った彼女が堕ちていく狂気。
劇中でも会話に登場するチェーホフを彷彿とさせるような静かに悲劇へと向かっていく物語。
陽の光で>>続きを読む
子供ってこうやって人知れず成長していくのだなぁ。
自分だけの大切なものを見つけて、それを大切にすることに喜びが湧き上がり、それを大切にできなかったときに目の前が真っ暗になり不幸のどん底を経験したりする>>続きを読む
目を背けたくなるような醜悪な生活を営む人々を手持ちカメラでひたすら生々しく映し出す、ダルデンヌ監督の初期作。
イゴールがゴーカートで友達と遊んでいる時の少年らしい笑顔と、仕事中の大人びた表情と言動が、>>続きを読む
チャンスが初めて屋敷の外へ出て街中を歩くシーン。
テレビで散々見てきたから何も驚くことなく歩みを進めていくチャンスが可笑しい。
しかしその後、外界にて波乱万丈のドラマが彼を待ち受けているのかと思いきや>>続きを読む
「Isn't it a Romantic」のピアノが流れる中、ニューヨークの雑踏を一人寂しそうに歩くロングコートのウディアレンの姿が目に焼きついて離れない。
映画の中で描かれる、絶望の末に自殺や宗教に>>続きを読む
「12人の怒れる男たちを論理的議論の苦手な日本人がやってみた」的自虐映画かと思いつつ鑑賞。
その予想通り建設的な議論ができないままに時間だけが過ぎていく様子にイラだせられ、救世主の男性も本家のようにキ>>続きを読む
将棋でも囲碁でもチェスでも、誰もが思いつかない一手を指すような天才というのは大体人間として癖がありすぎる変人であることが多い。
本作で描かれる29歳で夭折した鬼才棋士、村山聖も御多分に洩れず、相当な曲>>続きを読む