モモモ

バリーのモモモのレビュー・感想・評価

バリー(2018年製作のドラマ)
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1/29
1話
鬱気味の殺し屋が「演技」で「真実」を明かし解放を得る。キンタマに刺すか?に対してドン引きの依頼手。予想外の「既に死んでいる」からの間抜けジャムに容赦ない射撃。シュールなコメディと生々しい暴力の融合が良い。親父の呪縛がテーマかな。

2話
先生も先生で胡散臭いな…演劇讃歌、演技讃歌作品かと思いきやバリーが素でショックを受けた事も「今後の演技に活かせる!」だからな…カルトくさい…。電話で気づかない、バレバレな尋問(カメラの有無)、友達想いだな、上品なシュールブラックコメディが癖になる。自分のしてきた事に演技を通して向き合う、罪悪感を自覚する物語になるのだろうか。

3話
シュールコメディmeets殺し屋物語。伝説の老齢の殺し屋の自殺はバリーの辿る未来の1つ。一人でいたくないとの頼みで衝動的に動き、スーパーでの「自分の空間」を夢想する。明日への活力、演技への転換には良い兆候だが、殺人への疑問と罪悪感が同時に湧き起こる。実力のある役者が「実力のない無名の役者」を演じて、思わず涙が出てしまう演技をするの、高度過ぎるな。

30日
4話
不穏さともどかしさが作品を包み始めた。これで折り返し地点。いい構成だなぁ。バリーは恋愛経験が少ないようで、浮かれて、プレゼントして、空回り。metoo的クソエージェントに、オーディションは受ける事すら出来ず、バリーとは根本的にすれ違う。それでいて押しの強過ぎる先生はデートがなんだかんだで上手くいってしまい(先生もオーディションを受けている無所属なのが虚しいが)。売れてない俳優(先生も含め)の閉鎖的で先行きが暗い空気感がジワジワ胃に響く。カメラ復活に元海兵隊乱入にどうなる。軍人は口がクソ悪い。

5話
3話から顕著だったけど、ヒロインも可哀想な身の上ながら性格はよろしくないので応援もしづらいキャラ造形と言う…。有害な男らしさを捉え間違えている感じが強く、そうした嫌悪感を女性キャラに抱かせる行為自体に風刺になっているというか…。軍隊上がりのバリーはゴリゴリのホモソ野郎な訳ですからね。完全に殺人を楽しんでいる男に救われ、マクベスのテーマ性で殺人行為に躊躇が生じてきているバリーは始末をつける事も出来ず。困ったことが続いていく。北野武映画や韓国映画のような静かで唐突な暴力が良い。

6話
うわぁ…これは…露悪名エピソードだ。現状、1番好きな話だ。演技レッスンを通してのI love you. での失恋、教師と刑事の失恋。どちらも言葉ではなく、僅かな機敏で察し合うのがいい。特に刑事の表情。しょうもない恋愛だったのに、胸にくる。事件は馬鹿と後回し癖のせいで複雑な展開に。勘繰って空回りしている刑事陣に、痛い目(としか言えない)を見るバリー。勢いと男らしさの果てのラストが最高。遠くに映るマズルフラッシュからの、あの静かで唐突な暴力描写、本当に最高だぜ!!!

7話
凄い。6話からの畳み掛けが凄過ぎる。なんて多重的な構成。何て贅沢な演技合戦。シュールな幕開けから、シュールなボス達の会話から、物語は救いの無い底に落ちていく。静かなバリーの迷いが、感情の爆発が、車内のたった2ショットの切り返しで描かれる。凄い、凄いよ。そして罪悪感と後悔。演技ではない。真実の涙。そこから引き起こされる名演技。しかし、それは演技ではないのだ。どうオチを付けるのか。バリーの救いはあるのか。大根演技を意図的に演じる名優達…すげえよ…本当に素晴らしいドラマだ。

31日
最終話。救いがまるでない。タランティーノ脚本のような三つ巴劇と顛末。アホだが気のいい男は生き残って、何だかんだでドップリと殺しに染まってる男達は死んでいく。バリーに伝えた張本人が「…バリーか」と微笑む姿に若干の策士を感じたが、ただ単に気のいいアホなままでいて欲しいが。遂に辿り着く真実。バリーは心の平穏の為、禁忌を犯す。俺は善人で、やらされていただけ。では、手にかけた旧友は、刑事は、なぜ殺したのか。ここから始まるのは「自分を善人だと信じる演技」なのだろうか、本当の自分自身の人生なのだろうか。
モモモ

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