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きのう何食べた?お正月スペシャルのkuuのレビュー・感想・評価

3.8
『きのう何食べた? 正月スペシャル 2020』
製作年2020年
全3話
西島秀俊・内野聖陽W主演。
よしながふみ原作!シロさんとケンジのほろ苦くも温かい毎日と日々の食卓を描いた男2人暮らしの物語で、2020年元日スペシャルをほっこり視聴しました。

史朗(西島秀俊)と賢二(内野聖陽)は小日向(山本耕史)に超高級焼肉店へ呼び出される。そこには航(磯村勇斗)の姿も。さらに遅れてやって来たのは、史朗が大ファンの三谷まみだった。舞い上がる史朗に嫉妬した賢二は。

元日の夜にシロさんとケンジがお茶の間に帰ってきたってタイムリーで視聴された今作品のファンは思われただろうなぁ。
タイムリーで観てなかったのは不覚。
しかし、ミニサイズで少々もの足らなかった!
個人的にはケンジ推しなので楽しめたのは云うまでもないが。
今作品は、同性カップルの日常を、手作りごはんを中心に優しく丁寧に描かれてるし、何食べロスなどという言葉が生まれてたほどの大反響を巻き起こしてたそうな。
その時期は、小生蚊帳の外残念無念織田無道。
シロさん(西島秀俊)とケンジ(内野聖陽)が原作に近いキャラ演技で何より嬉しい(シーズン1を観たあと原作既読)。
彼らはパラレルワールドできっとでそのまんま暮らしてたんやろなぁ。
通常回は1話40分やったが、今回は特番らしく3章仕立ての90分。
ここがチョイもの足らなかった。
誰のために時間とお金を使いたいか!
ちゅうのがテーマが、シロさんとケンジ、そして彼らを取り巻く人々を通じて描かれていた。
劇場版を続いて観てみようと思うほど、彼らの日常にもっともっと触れたいと思える作品でした。

第一話あらすじ
史朗(西島秀俊) と賢二 (内野聖陽)は小日 向(山本耕史)に超高級焼肉店へ呼び出され る。
そこには航 (磯村勇斗) の姿も。
さらに遅れてやって来たのは、史朗が大ファンの三 谷まみだった。舞い上がる史朗に嫉妬した賢 二は...。そんな折、史朗のもとに久栄 (梶芽 衣子)からお金を工面してほしいとの連絡 が。かつて久栄はあることにお金を使い込ん でしまい、史朗はそれを自分のせいだと思っ ていた。

第一話の冒頭はシロさん、ケンジのカップルに、2人の友の小日向(山本耕史)、ジルベール(磯村勇斗)カップルの高級焼肉ダブルデート。
そこへ現れたんは、シロさんがかつて憧れていたアイドル女優の三谷まみ(宮沢りえ)
西島秀俊の演技はホンマ巧い
往年のスターを身近で見たよなキラキラした演技で、こないな西島秀俊を見たのは初めてかもしれへん。
小生推しの、乙女でヤキモチでご機嫌斜めだったケンジだが、シロさんの誕生日はちゃんとハイテンションで祝う。
プレゼントは3万円もする高級な傘。
見るからに高げ。
贈るほうが嬉しそうな乙女ケンジ。
『お前、これ、相当高いな』とつぶやくシロさんは人柄がでてるセリフ。
このやりとりが仲の良さを表してて微笑ましかった。
しかし、彼らの訪れる誕生日は楽しいことばかりやないんじゃなぁ。
シロさんは両親(梶芽衣子、田山涼成)から借金を申し込まれる。
かつて母親がシロのことに悩み新興宗教にハマって高価な壺などを買ったため、老後のお金に事欠くようになっていた。
帰り道、雨が降り始めるとシロさんはケンジからもらった傘をさす。
ケンジの愛情が悲しみの雨からシロさんを守っているように見える。
ホンマこないなさりげないシーンが余韻を残すし、毎回、脚本力を感じる。
シロはスーパーで出会った友人の主婦・佳代子さん(田中美佐子)に、母親が新興宗教にお金をつぎこんだのは息子が同性愛だと知ったせいだと打ち明け、自分のせいなんですとうつむくが、それを見た佳代子さんは明るくこう励ます。
筧さんが今こんなに立派になったのは、もしかしたらその壺のおかげかもしれないじゃない?と。
そんなわけはないが、聞くほうは気分が軽くなるに違いない。
何の役にも立たない高価な壺も、母親の愛情の表れとちゅうわけ。
気を取り直したシロが作った夕食は、家庭の温かみが伝わってくるものばかりやった。
楽しそうに料理するシロさんと自然に手伝っているケンジの姿がよき。
宮沢りえの登場は特番らしい華やかさもあったかな。
1章は異なる原作エピソードを軽やかにつなぎあわせて、大切な人のために高いお金を使うことは、けっして無意味ではないことを伝える脚本の力が冴え渡っていた。

第二話
4月。史朗と賢二の家に憔悴しきった表情の小日向が訪ねて来る。
俳優の誘いで潮干狩りへ行った小日向が大量のアサリを抱えて帰宅すると、約束をキャンセルされてもともと機 嫌が悪かった航が 「アサリが苦手」とさらにヘソを曲げたと云い。
そんなある日。
自宅で仕事を終えた航は空腹を満たそうと開けた 冷凍庫で、史朗が小日向に持たせたアサリを 発見。
珍しく料理をしようと中村屋へ向かうと買い物中の賢二と遭遇する。。。

第二話はヘンテコカップル、小日向とジルベールがフューチャー。
小日向を演じる山本耕史の肉体美すごっ。
このワインを煮込みに使うなんて、ソムリエが泣いちゃうよ?
ちゅうセリフをタンクトップ一丁でカメラ目線。
笑わせよる。
また、料理を作ろうと決心したジルベールは、スーパーで“悪魔の食べ物”と噂されるジャンクフード『わさビーフ』を買っているところをケンジと会う。
ジルベールはお手製のキムチチゲを食べてご満悦やった。
朝からおせち料理を食べていた視聴者にはえげつないほど食欲を刺激する映像になっていたに違いない。
帰宅した小日向に語る小説の一節は村上春樹の『ノルウェイの森』が元ネタやそう。
ジルベールのわがままに喜んで応える小日向は意外にもカップルあるあるかもしれない。
その労力をコストちゅう言葉と置き換えると、以前語られていたゼニと同じ意味を持つ。
好きな相手のためには、どれだけ労力をかけてもかまわないと思うのは、ちっともおかしなことじゃないんちゃうかな。
意外と小日向みたいな人はいたりする。

第三話
5月。
忙しい史朗に代わり料理や家事をして いた賢二だったが、1週間で予想以上に浪費 したことが発覚。さすがに買い物を工夫しな ければと反省する。三宅レイコ (奥貫薫) か らチラシアプリに登録するといいとのアドバ イスもあり、賢二は次第に予算が抑えられる ようになっていく。だが史朗とのすれ違い生 活も3週間が経過。ひとりの食卓、食べても らえない夕食の食器--賢二は寂しさで押しつ ぶされそうになっていた。

第三話は、仕事に追われるようになったシロさんの代わりにケンジが夕食の用意を買って出るお話でした。
食費を1ヶ月2万5000円に収めるために一生懸命スーパーを駆け回るが、どんなに夕食を作ってもシロさんはなかなか帰ってこられない。
それでも優しきと返事するケンジの姿が健気でいじらしい。
小生も毎月ゲームのようにいかに食費を抑えるか楽しんで自炊をしてるし、毎回、親近感がわく。
旨いモンを一緒に食べたい、食べさせてあげたいと思う人と一緒に美味しいものを食べる。
これはどんな人たちにもあてはまる普遍的な幸せの形にちがいない。
そんな気持ちを思い浮かべてニヤリとする回でした。
最後にケンジが欲望の限りを尽くしたオムライスを完成させるが、シロさんと2人で分け合って食べるのはうしろめたいからじゃなくて、そのほうが幸せだから。
ケンジは食費を2万5000円に抑えることに成功し、23円を残した。
ケチに聞こえるかもしれないが、シロは自分とケンジの老後のためにお金を貯めているんやから、まったくおかしくはない。
時間をかけてメシを用意し、おゼニを使い、労力をかけ、ゼニの心配をしないようにすることは、大切な人のことを思ってやっているのであれば、まったく苦にならないはず。
自分の利益だけを考える人が増えている昨今、当たり前のようで少し忘れられていることを、押しつけがましくなく伝えてくれるドラマです今作品は。
ギルバートのワガママに応えようとする小日向さんの姿勢も今作品ではオモロし捨てがたい。
彼らは、ちょっと不思議な感じがするが、コストちゅう言葉を労働ちゅう言葉に置き換えりゃ、第一話で取り上げたゼニと同じ意味になる。
愛する人のためなら、どんな労力も惜しまないといちゅうのは、まったく不思議なことではないと思う。
本人が同意の上ではやけど。
意外と小日向のような(言葉通りの)パートナーもいるのかもしれない。
今作品はチョイ駆け足な作りながら、劇場版を観たいと思える作りになってました。
個人的には楽しく微笑ましく観れました。
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