未体験ゾーンの映画たち2022。私は京都住まいで鑑賞の度に新快速で大阪へ遠征。既に「ザ・ビーチ」「アクセル・フォール」「TUBE チューブ 死の脱出」「クリフハンガー/フォールアウト」「ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス」「マザーズ」「デモニック」レビュー済。シネリーブル梅田で鑑賞。

「ハッピー・デス・デイ」ブラムハウスのプロデューサー最新作←巧妙だな(笑)、確かに嘘ではない。但し創業者Jason Blumはクレジットから外れた。プロデューサーRyan Turekは過去に「インシディアス 最後の鍵」「ハロウィンKILLS」手掛けた。作品の出来を見たJason Blumはブラムハウスの看板は許したが、自身の関与からは逃げた曰く憑き。

Owen Egerton監督と言えば前作「モンスター・フェスティバル」コメディ・ホラーだが、アメリカの評価が「無駄な時間が有っても近づくな」散々にも関わらず、脚本を採用したのがRyan Turekなので同罪だな。監督はレビュー済「スレンダーマン 奴を見たら、終わり」パクリで脚本を書いたが、90分は埋められそうに無く、有名な事件「メアリー・ベル」別名タインサイドの絞殺魔からインスピレーション、いやパクリで完成させた。

スレンダーマンは都市伝説で信憑性はゼロでは無いが、メアリー・ベルはイギリスで起きた事件で当時10歳の少女が2人を殺害して一度は有罪判決を受けたが「加虐性人格障害」を認め逆転無罪。23歳で釈放されたが、王室から生涯に渡って匿名で生きる権利を与えられ、娘と孫娘にも拡大。この事件はミステリー小説でお馴染み、サディズム「加虐性欲」パラフィリア「性的倒錯」として広く引用される。

アメリカの都市伝説で最も有名なのは「ベビーシッターと2階の男」。映画化に成功した「暗闇にベルが鳴る」何度もリメイクされる人気振り。Urban Legendと言う原題の1998年「ルール」も続編が数多く作られた。最近だとレビュー済「キャンディマン」の様に都市伝説がモダン・スリラーに進化した例も。対するマーシー・ブラックは、クリエイティブと言うよりパクリの寄せ集め、オチも容易に察しが付く。

監督のインタビューでJason Blumは彼にこう助言したらしい「良いホラー映画はジャンプスケアや視覚効果を除いても魅力的で観客が探求したいキャラクターが描かれてる」とても良いアドバイス(笑)。更に「サンダンス映画祭で上映される作品であれば映画は正しい道を歩んでる」。サンダンスにはエントリーも出来なかったが、それは本作が社会問題に為ったアメリカ、ウィスコンシン州で起きた「スレンダーマン刺傷事件」。
www.hollywoodreporter.com/news/general-news/father-slender-man-attacker-claims-new-film-is-popularizing-a-tragedy-1071421

と言う訳でBlumhouseの看板だけでは劇場公開されずRyan Turekは途方に暮れるが、捨てる神あれば拾う神あり。ネタ不足のNetflixが規格をTVムービーに格下げ(値段が全然違うのよ)買い叩き、配信スタート。日本ではジャケ写詐欺で有名なアメイジングD.C.が権利を獲得したが、ジャケ写を良く観て欲しい「全米No.1ヒット」はハッピー・デス・デイで、本作では無い。これ110番してオレオレ詐欺で通報できるよ(笑)。

私は劇場で観ながらアンガールズが出演した「ノロイ」を思い出した、ご存じ無い方の為に要約するとホラー映画の第一人者白石晃士監督作品。2004年4月、怪奇ルポの小林雅文の自宅が全焼する火事が有ったが、焼け跡から妻の遺体だけ発見され、本人は失踪し現在も行方不明。小林はドキュメンタリー「ノロイ」を完成させたばかり、お蔵入りの危機を「リング」一瀬隆重が映画として完成。未見の方は「ノロイ」お薦めです。

ノロイは「禍具魂」かぐたばと言う言葉が拡散の原因だが、Jason Blumが「スレンダーマン刺傷事件」の関連から裸足で逃げた気持ちも解るが、作品の出来が悪いから逃亡したと事前に聞いたので、その割には楽しめたかなと。確かに多くの都市伝説の闇鍋の域を出ないが、Ryan Turekは温故知新的な古きモノを現代に蘇らす事が巧みで、生贄がアイコン化してネットで拡散するのは、プロット的にも悪くない。加虐性人格障害も、現在ならストレスに依る適応障害として十分にケアされるだろう。

ホラーとかスリラーの括りから外して「怪談」として観ると違う景色も広がる。アメリカではCOVIDの副作用で配信会社が過当競争を続け、深刻なネタ不足に陥る。ディズニーが独占禁止法の監視下に置かれるリスクを背負っても20世紀フォックスを買収した様に、B級スリラーやホラーは作品の質に関わらず跳ぶ様に売れる。アメリカは「心霊」と言うジャンルは不毛、どうしても「悪魔の住む家」実録モノに人気が集中する。本作はそう言った社会的視点を深堀りしたUrban Legendとして描けば、もっと面白く出来た筈だ。

京都にも1200年の歴史を誇る心霊現象は数多く有るが、都市伝説は必ず独り歩きする。

ブラムハウスプロダクション製作だからと、そこまで期待値上げていた訳ではないけど、にしても、ハズレだったなあ。

都市伝説の怪物・・という、結構、出尽くした感があるテーマで、どんな捻りがあるのかと楽しみにしていても、ダラダラとしたストーリーで、全く捻りもなくオチも想定の範囲内で、とにかく88分がとても長く感じてしまった。

そもそもこのジャケ写にも出てくる怪物の容貌が全く怖くないってのが致命的。

あらすじ↓
母親の病気を治すため、友人リリーを刺し、指を切った少女マリーナ。それは悪夢を現実化する魔物“マーシー・ブラック”を呼び出す儀式だった。15年後、彼女は新しい人生を始めようとするが……。

感想↓
2023年 373本目の映画。

あんまり面白くなかったなぁ。全米No.1大ヒットの作品をこんな風に言ってごめんなさい😂