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ポスト・モーテム 遺体写真家トーマスのHKのレビュー・感想・評価

3.0
原題は“Post Mortem” ハンガリーのホラー映画です。
語源はラテン語の“Post(後)”と“Mortem(死)”を組み合わせたものですが、医学的には検死や解剖、ビジネスでは反省会や事後評価の意味もあるとか。
検索すると同じ原題の全く別の映画が3本出てきました。

本作の主人公トーマスはサブ・タイトルのとおり“ポスト・モーテム・フォトグラファー(遺体写真家)”です。
遺体の記念撮影は19世紀半ばのヨーロッパで流行ったらしく、名作『アザーズ』の他いくつかの映画でその存在は知っていましたが、本作では、器具やテープで体や頭を固定したり、硬直した死体にギシギシとポーズをつけたり、化粧をしたりと死体撮影の様子をなかなか興味深く見せてくれました。

舞台は第一次大戦直後、戦争と流行り病(スペイン風邪)で多くの人が死に、生者よりもむしろ死者の方が多いというあるハンガリーの寒村。
しかも地面がカチカチに凍って死者を埋葬できないため、誰の家にも死者が布を被せた程度でゴロゴロと放置してあります。寒いから腐ることもないんでしょうが・・・ゾッ。

ということで、主人公の戦場での臨死体験や、遺体写真家としてコツコツと仕事をこなす様子、謎の美少女の登場、村で小さな怪現象がジワジワと積み重なっていく展開が寒々しくも美しい映像で描かれる前半は期待値が上がります(見えない何かと遊ぶ犬が印象的)。

ところが、後半は怪現象がどんどん派手になると同時に、なんだかありきたりなホラーになってしまい、いくつもの未回収の謎とともに消化不良で終わってしまったのは残念。

いっそのことホラーなんかにせず、遺族が遺体写真を撮って死者を悼むという当時の文化と主人公の信条をもっと掘り下げたドラマにした方が面白い映画になった気がします。
雰囲気は嫌いじゃないんですけどね。

ラスト、悪霊のいる別の町に向かうようにも見える主人公トーマスと美少女アナ。この2人、手塚治虫「どろろ」の“百鬼丸”と“どろろ”のコンビのようにも見えました。
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