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PLAN 75のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

高齢化が更に進んだ近未来の日本が舞台。
そこでは75歳超の高齢者が僅かな支給金と引き換えに安楽死を選ぶ「プラン75」という制度が成立していた。夫と死別後、清掃員として生計を立てていた主人公はある事件をきっかけにリストラされてしまう。再就職もままならず、追い詰められた彼女はプラン75への申請を検討するのだが......という話。
監督のオムニバス短編を再構成して長編化した作品らしい。

あらすじを読んだ時はディストピア的な管理社会を描いた刺激的な話かと思っていたが、プラン75の設定以外は高齢化社会問題と独居老人の孤独、そして彼らを取り巻く若い世代の葛藤をドキュメンタリーのようなタッチでじっくり追った映画だった。敢えて状況が分かりにくい撮り方をしているようで、その手法もリアリティを感じさせる効果があった。

主人公の老人と、プラン75の手続きを担当する青年、プラン75の施設で遺品整理や清掃を請け負うフィリピン人女性の三者の視点で物語は進む。主人公は品があり、高齢者仲間の中でもしっかりしていて、なるべく社会保障に頼らず自力で生活したいと望むのだが、リストラにより行き詰まってしまう。
結局、プラン75申請を選ぶことなる中で、一人孤独に生きている彼女の心情や老いで徐々に自由が効かなくなる体のつらさが垣間見えて、観ていてつらくなった。プラン75の説明を担当するオペレーター女性との交流と別れのエピソードは涙なしには見られなかった。

設定としてはそもそもこの制度が日本で施行されるのは難しいだろうと思ったし、支給金10万円で死を選ぶかというのも微妙なラインだと感じた。まあ、主人公のように老境に至るとお金の使い道よりも他者との触れ合いを求める人もいるとは思うけれども。劇中でも反対団体や利権の存在も仄めかされていたし......
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