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非常宣言のbackpackerのレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
4.0
フライトパニック映画史、新章開幕!

パニック映画(ディザスター映画)ジャンルではお馴染みの、フライトパニック。必ずしも飛行機内という空飛ぶ密室で全てが完成するわけではなく、空港内で発生する事件や、管制塔での喧々囂々、機内にいる人物の家族とのやりとり等、複数の要素が絡み合い物語が進行するのが定石です。

一般的に、ディザスタージャンルブームの火付け役とされる『大空港』から始まるフライトパニック系映画の系譜は、『大空港』の続編のエアポートシリーズや『オスロ国際空港/ダブル・ハイジャック』といった70年代系のパニック映画の他、アクション映画の『ダイ・ハード2』『パッセンジャー57』『エグゼクティブ・デシジョン』、密室サスペンスの『フライトプラン』、ちょっと変わり種『スネークフライト』等、面白い作品が多々あります。
そんなフライトパニックジャンルに、新たな名作が誕生しました。
その名は……『非常宣言』!
近年の韓国映画の粒揃い具合は大変なものですが、特にディザスタージャンルが熱い!
韓国ディザスターを躍進させたのは、やはり『新感染 ファイナル・エクスプレス』の果たした役割が大きかったですが、韓国ディザスターの中でも上位に来る素晴らしい出来栄え。韓国では、揚げパン屋とパソコン修理屋夫婦のフライトパニック映画『ノンストップ』という作品がありましたが、あちらはアクションコメディでしたので、ちょっと別物。本作は、飛行機という密室空間に『カサンドラクロス』系のバイオテロ要素を加え、地上での政治劇が状況を左右する中で乗客を救出しようと奮闘する人々を描く、ディザスター映画の鉄板である群像劇として、大変上手く作られていました。

見どころがたくさんある映画だった本作。
飛行機がハワイから引き返すシーンを、夕日の光の流れで見せるところなんか、絶望感一入でしたし、実際に廃飛行機をグルングルン大回転するセットを組んで行った人間洗濯機シーンなんか、今まで見たことないイカれた映像でしたよ。
そんな見どころ満載の作品の中でも、やはり一番よかったのは、出演者達の演技でしょう。

W主演のソン・ガンホとイ・ビョンホンといえば、個人的には『JSA』を思い出しますが、いやはや、イ・ビョンホン、『白頭山大噴火』でも思いましたが、いーい感じのイケおじになりましたねぇ。ますます魅力的になってますよ。ソン・ガンホは昔からおっさん顔でしたが、ここに来て一層厚みが出てきましたね。
W主人公のソン・ガンホとイ・ビョンホンは、空の上と地上という隔絶された状況ながら、家族・娘の為に必死に頑張るという意味で、全く同じ役回り。そんな二人のおっさんが、絶望的な状況の中でも、懸命に立ち向かっていく姿、めちゃくちゃカッコいいなぁ。
スーパーダディ映画としても、良くできてます。
勿論、彼らが戦う原因を作ったスーパーイカれマッドサイエンティストのリュ・ジンソク(演: イム・シワン)も忘れてはなりません。
イム・シワンのずば抜けた怪演があってこそ、本作前半の恐怖指数が高止まりを維持できたのですから。
イム・シワンはアイドルグループ『ZE:A』のメンバーとのことで、韓流に全く詳しくない私は、お恥ずかしながら存じ上げず。
ただ、本作のサイコな演技を見て、一発で好きになりました。「韓国ノワールに出てたら最高だな」と考えたところ、『名もなき野良犬の輪舞』という作品を発見。是非とも鑑賞してみないと!
(『スマホを落としただけなのに』の韓国リメイクにも主演してるそうですが、そちらは……一旦保留で笑)
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