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Boy from Heaven(英題)
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『Boy from Heaven(英題)』に投稿された感想・評価

Omizu
2.0
【第75回カンヌ映画祭 脚本賞】
タリク・サレー監督のポリティカル・サスペンス。カンヌ映画祭コンペに出品され脚本賞を受賞、アカデミー国際長編映画賞ではスウェーデン代表に選出されショートリストに残った。

面白さが見出せない作品だった。巻き込まれ型サスペンスとしても宗教ドラマとしても入り組んでいる割には薄味。無味無臭の作品という印象。

スウェーデン映画ではあるが舞台はエジプト。宗教の覇権争いに巻き込まれる青年を描いたドラマだが、どこに面白さを見出せば良いのか困惑するしかなかった。

演出もこれといって特徴がなく、エジプトを映した撮影も映像美というほどでもなく。演者のテンションも低く印象に残る演技もない。

脚本賞をとっているということで確かに込み入った話ではあるが、描写が薄く入り込むまでは至らず。

なぜここまでの高評価を獲得しているのか理解に苦しむ一作だった。日本で配給がつかないのも納得。もっとも宗教に関してもっと関心があれば楽しめるのかもしれない。私の知識不足もあると思うが、それを抜きにしても面白みのない作品だった。残念。
["国家とアル=アズハルは対立してはならない"] 80点

傑作。2022年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。北米上映時の題名は『Cairo Conspiracy』らしい。アル=アズハルはファーティマ朝によって970年に創設された世界最古の教育機関の一つである。1924年にカリフ制が廃止されてからは、アル=アズハル大学の総長がスンニ派の最高権威とされている。何世紀もの間、エジプトの支配者はアル=アズハル大学を支配しようとしてきたが、今のところ成功していないらしい。主人公のアダムは漁師の息子だが、アル=アズハル大学への奨学金を手にしてカイロへ向かった。ここでの授業は屋外の広場で導師を囲んで座り、導師の言葉を聞くというもの。寮生活も始まるが、狭い部屋に三段ベッドが4つほど押し込まれているという過密すぎる生活も垣間見える。そんな折、偉大な総長が演説中に倒れて帰らぬ人となり、次期総長の席を巡った血みどろの戦いが幕を開ける。軍部は大統領と思想が近いベブラビ導師を後任に推すが、学内で支持率が高いのは盲目の導師であり、ムスリム同胞団系の導師も固い票を持っていた。そこで軍部は、どの集団にも属していない新入生としてアダムをスパイにして学内政治に介入しようとし、彼と彼の飼い主であるイブラヒム大佐の間で様々なバトルが展開される。一方で、先任のスパイだったジズは、アダムをスカウトした直後に広場で殺されており、誰が彼を殺したのかでもう一つのミステリーが立ち上がる。

何者でもなかった青年を中心に国家を巻き込んだ陰謀が展開され、悪運が強いのか彼は常にオヤジたちに翻弄され前線を渡り歩きながら、既の所で交わして生き延びていく。髭面の男しかいないので人物判別に苦労するのと、そこまで映像にする必要性を感じないという問題点はあるのだが、刻々と移り変わる前線を追っていくスピード感は素晴らしいと思う。登場人物の背景を簡素化しながらも行動理念の底にある感情が見える演出も上手い。よくぞコンペに選出してくれた。私はこういう作品を観たいのだ。
4.0
カンヌ国際映画祭脚本賞受賞のポリティカルサスペンス。
イスラム教スンニ派の最高学府アル=アズハル大学に通う純朴な漁師の息子アダムは、最高指導者の死と友人の暗殺をきっかけに苛酷な政治闘争に巻き込まれていく……
いつしか私利私欲や政治の道具となってしまった宗教の現場に批判的な視点で斬り込む。
イスラム教の教義や仕組みに造詣が深くない人でもグッと惹き込まれる脚本が秀逸。