ときめく心に素直に、そして目の前の人に親切に生きていたら、素敵な出会いの連鎖が起きていく。心が温かくなるおとぎ話のような作品でした。
ハリスはコルベールに「なぜDiorのドレスを?」と問われるけれど、惹かれることに理由なんて要らないよね。歳を重ねるごとに、挑戦したり夢を追うことを恐れて年齢を言い訳にしたくなるけれど、ハリスのように素直に行動できる人でいたいと思った。
ドレスを見たときの恍惚の表情も忘れられない。素敵なものを見たときの胸の奥からエネルギーが湧き出てくるようなキラキラした気持ち。体温が上がるようなあの感覚。何歳になっても何かにときめいていたいよ。
Diorのスタッフたちがハリスに親切にしていたのは、ハリスのDiorへの敬意が感じられたからだと思う。きっと意地悪なご婦人のようにDiorのドレスをステータスシンボルとしか見ていない人とは違うと、直感で分かったんだね。
パリへ行く前のハリスは、働き先で無茶を言われたり賃金未払いがあっても強く出られずどこか弱気だったけど、パリで労働者たちが敬意がなければストライキをしてNoを突きつける姿を見て感化されたに違いない。帰国後のハリスは賃金未払いの主人には「私を見下す人には忠誠を誓えない」と自分から契約打ち切りを告げるし、パメラには鍵を返す。
Diorの特別なドレスを仕立ててもらったハリスは、自分自身を特別な存在として認めてあげられるようになったのだろう。ファッションの素晴らしいところのひとつだ。