シムザスカイウォーカー

12日の殺人のシムザスカイウォーカーのネタバレレビュー・内容・結末

12日の殺人(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

滑り込みで鑑賞。率直に観てよかった。

容疑者の男たちと自分を重ねたヨアンと、容疑者の交際相手と自分の妻と重ねたマルソー。刑事としては正しくない姿かもしれないけれど、人としては正しい姿に見えた。

女性に向けられる差別や偏見や懲罰意識に気付いた彼らは、男の加害性に気付き戸惑い嫌悪する。

「殺された理由を知りたい?教えてあげる。女の子だからよ。女の子だから。」

被害者クララの親友ナニーが泣きながらヨアン訴えたこのシーンが特に印象に残ってる。クララが奔放な女性であり、殺されても当然と言わんばかりの質問を投げかけたヨアン。堪らなくなったナニーの必死の訴えに、ヨアンは自分の中の差別意識や偏見に気付くことになる。

監督のドミニク・モルはインタビューに次のように語っている。「昨今、私たちの日常は男性による女性への暴力に直結したニュースで溢れています。このような現状は間違っているし、運命だと片付けてはいけないのです。」

女性が被害者の場合、加害者ではなく被害者が叩かれることが珍しくない。「そんな服装をしていたからだ」「その時間に歩いていたからだ」「言うことを聞かなかったからだ」と。

特に女性の性暴力被害者はセカンドレイプを受けることが多い。そうした二次被害に抗議した人たちが、被害者の事件当時の衣服を集め展示を行った。ミニスカートもあれば、肌が一切露出しないものや、ボーイッシュなもの、体のシルエットが分からないもの多岐に渡る。その展示は見るものに教えてくれる、なぜ彼女たちが被害に遭ったかといえば"女性だったから"で女性に落ち度はないということ。

後半に登場する新人捜査官のナディアもまた、ヨアンに男性社会の中でただ"女性であること"の困難さを気付かせてくれる。

犯人は捕まらず、事件は未解決のままだけれど、男性であるヨアンが女性が受ける不条理に気付いたことだけでも、今は希望になると思った。