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ヒトラーのための虐殺会議のbackpackerのレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
3.0
"議題 1,100万のユダヤ人絶滅政策 1942年1月20日 ヴァンゼーにて"

1942年1月20日、ドイツ・ベルリンのヴァン湖畔の親衛隊所有別荘にて、「ユダヤ人問題の最終的解決」についての会議が行われました。
議長は、ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。ベーメン・メーレン保護領副総督であったハイドリヒを、イギリスとチェコスロバキア駐英亡命政府の計画により暗殺した”エンスラポイド作戦”は有名で、『死刑執行人もまた死す』(1943年)、『暁の7人』(1975年)、『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』(2016年)と、名作映画がいくつも作られています。

この会議の目的は、ホロコースト計画完遂の為に「ユダヤ人問題の最終的解決」を推進させること。従前の関係省庁による縄張り・権利争いを一旦クリーンにし、統括部署を創設することで、優先順位意識の違い等による停滞や、法的根拠に基づく手持ち札(影響力)の減衰を防ごうとする障害を、打破しようというものです。
平たく言えば、ハイドリヒへの権力集中の一環、ということですね。
この手の権限争いや利権を巡る対立は、政治家・官僚組織・社会構成基盤となる組織単位の大小に関わらず、えてしてついて回るもの。
本作では、そんな権利争いによる融通の利かない人間関係と、お役所仕事の機械的冷淡さが融合して、非人間的で残酷な決定が淡々と決められていったのかを描く、血も凍るようなホラー映画です。
とりわけ、個人としては善性の凡人達でも、寄り集まれば究極の悪となることを常に意識させられるため、平凡な自分には一層身につまされました。
スーパーヒーローものに登場するような、世界を揺るがす絶対的巨悪も、いないとは言いません。でも、個々の小市民の生み出す同調圧力が生み出す邪悪の方が、嫌な意味で親近感があるんですから、勧善懲悪式のヒーロー物語の悪が幼稚にさえ思えてしまうんだから、恐ろしい……。

本作の題材となっているヴァンゼ―会議については、過去にも『Die Wannseekonferenz(The Wannsee Conference)』(1984年)や『謀議』(2001年)が制作されておりますが、私はどちらも未鑑賞。特に『謀議』は、長らく観たい&欲しいと思って探しているんですが、DVDが結構いい値段(8,000~14,000円くらい)のため、なかなか踏ん切りがつかないんですよねぇ……。レンタル落ちでもこの相場、高すぎぃ!
なお、前者は、大きい声では言えませんが、世界的に有名な某動画投稿プラットフォーム”あなたのクダ”に転がってるので、見れなくもなかったりしちゃったり……。
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