こうん

離ればなれになってものこうんのレビュー・感想・評価

離ればなれになっても(2020年製作の映画)
3.8
ひとりの女性と3人の男性の10代から50代までの愛と友情のクロニクルという、超のつくメロドラマでした。良くも悪くも通俗的で新味がないと言えばなくて、新曲だけどどこか懐かしい歌謡曲、みたいな感じでしたかね。
観終わって入った有楽町の中華屋のテレビに新生・純烈が唄ってましたけど、ちょうどあんな感じ。「別に悪くはないんだけど」と思いながら、老けていくジェンマたちを眺めていました。
一種の青春モノではあるんですが、連中が40歳50歳になって苦味が増えていく描写のほうが面白かったことが、私の加齢に起因していることをひしひしと感じましたね。
純粋でなくなったけれども、それでもまだ残っている純粋な部分を関係性の中に見出していく尊さ、みたいなものがちょっと実感としてわかるというか、ラストショットなんかは普通にジーンとしました。じんわりハッピーな感じなんだけど、あんまりニコニコもしていないところが人生の黄昏時を感じさせて、その塩梅がよかったです。
ただまぁ、作劇というか感情劇として、あまりにもストレートすぎるというか、ひねりや屈折や溜め込む感情表現があんまりなくって、そこは国民性なのかもしれないけど、もうちょっと複雑玄妙なドラマが欲しいところでしたかね。
あとクロニクルとして1980年代初頭から始まって2010年代くらいまで語られるんだけど、あんまり時代と伴走している感がなくって、時代に翻弄されるような面白さに欠ける感じでしたかね。ま、イタリアの世情に疎い事もあるけれども(ベルルスコーニさんは面白かったね)、語られる個人レベルのインシデントとそこから起こるドラマに時代性が薄いゆえに古臭く感じちゃった次第。“イキノビ”とか、巻き込まれ被弾したことが綽名以上に彼のキャラクターに反映されないし、ジェンマの流浪とかパオロの不遇とか、どう時代と密接なのかわからんところが、イマイチなところでした。
ただ個人的にはリカルドさんがちょっと「ロッキー」のポーリーみたいなダメさがあって愛おしかったです。あと大人ジュリオの老け顔の圧力に胸焼けしました。
ま、なんか濃厚なジェラートを4つほど食べた気になる映画でした。明日のウンコまで甘くなりそう。
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