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君たちはどう生きるかの小のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

世界が自分の思い通りにならず苦しい気持ちの時、オジサン(自分)は世界がめちゃくちゃになって欲しい、あるいはこの世界から消えてしまいたい、と思うけれど、少年の頃は世界を自分の理想の姿にしたい、と思っていたような気がする。

残っている時間の差がオジサンと少年の思いの違いの理由だろうけど、いずれにしても自分は少年からオジサンになっても<自分を中心としてものを見たり、考えたりしたがる>「天動説」的性質から抜けきれない凡人であることを痛感させられた映画。

本作のテーマは同じタイトルの吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』と良く似ている、というか同じような気もする(引用は上記も含めこちらの著作からです)。

主人公はアレコレあって、ものの見方、考え方が天動説から地動説へと変わり、広い世の中の一分子として次のように決心する。

<僕は、すべての人がおたがいによい友だちであるような、そういう世の中が来なければいけないと思います。人類は今まで進歩して来たのですから、きっと今にそういう世の中に行きつくだろうと思います。そして僕は、それに役立つような人間になりたいと思います。>

鑑賞直後の感想は「自主制作作品みたいで、主張の強そうな面倒くさい映画」だった。でも社会に強い影響力を持つ宮崎駿監督は、わかりやすさを敢えて捨て、商業的な成功は二の次で、できるだけ多くの人に考えてもらいたいと思っているのではないか、と。

書籍『君たちはどう生きるか』は軍国主義による閉塞感が強まる1930年代(1937年)に出版。1941年12 月8日、日本はハワイ真珠湾を奇襲し太平洋戦争へ突入した。

多くの人が世界全体に不穏な空気を感じているであろう今、再び問われるメッセージ、それが映画『君たちはどう生きるか』じゃないかな。
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