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ザ・キラーのyamadakabaのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

仕事に失敗した暗殺者が、逆に命を狙われ愛する人を傷つけられ、復讐する物語。ポリシーや復讐のため=仕事ではない殺しをし、リゾート地でゆっくり過ごす時間を手に入れた彼の中に生じたのものは?

マイケル・ファスベンダー演じる暗殺者は、殺しをビジネスとして考え、感情を廃し、お金のために合理的に殺しを行う。モノローグでもそう語っている....のだけれど、実際はそんなビジネスライクにはいかないよね、というメッセージかもしれない。
そもそも、できることを自分に言い聞かせるようにはしない。同情してしまうから、同情するなと自分に言い、共感してしまうから、共感するなと自分に言う。
殺し屋だって同じなんだろう。だから、この暗殺者も言葉とは裏腹に、実際やっていることは、殺す相手に会い話を聞くような合理的でないことをし、殺しに入ったら反撃を喰らいやられそうにもなる。犬も殺さない。
スタイリッシュな映像とは逆に人間臭い一面を見せてくれる。

この男にとって殺しの仕事も同じ。ビジネスとしてやっていただけ、のはずなのに、復讐のために殺しをすることで、気づいてしまったものがあるよう。それがラストシーンの表情らしい。生きる糧のためにやっていたものだったけど、平穏な暮らしになったら物足りない。そこで実は生きる糧だけじゃなかったんだと、気づく。

働きがいを知っている人は、みなこの男と同じ気持ちがあるんじゃないだろうか?
賃金を稼ぐ以外の目的や楽しみを労働に見出している。
むしろ、人生の多くの時間を割かなければならない労働だからこそ、楽しみを感じられるなにかが必要じゃないか、と言っている。そんな気持ちにさせられる映画だった。
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