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運び屋のyamadakabaのネタバレレビュー・内容・結末

運び屋(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

90歳の麻薬の運び屋レオ・シャープが捕まった事件を元にしたという実話モノ。御大クリント・イーストウッドが運び屋アール・ストーンを演じている。

「この役を他の役者に譲りたくなかった」イーストウッドは語る。自分の人生や生き方をレオ・シャープに重ね、映画に盛り込んでいる。ホワイトハウスに呼ばれるなどデイリリーの園芸家の巨匠だったレオ・シャープに、映画の巨匠となった自身の姿をダブらせたようだ。レオ・シャープの私生活はわからなかったそう。だから、イーストウッドはそこに、仕事ばかりで家庭を顧みない人生を歩んできていた、自分の私生活や人生を重ねていくことにした。
自分と家族の関係を自業自得と嘆いたり、実の娘(アリシア・イーストウッド)を作中の娘役で出演させて「あんたは最低な父親よ!」言わせるなど、実生活を思わせるシチュエーションを映画の中でも再現している。実際言われたことがあるんじゃないか、もしくは言われる自分を想像しているんじゃないだろうか。

イーストウッドは「他の俳優が演じることでメッセージが正しく伝わらない可能性があるため自分で演じることにした」とも語っている。
アールは、イーストウッド世代の男の価値観を象徴だ。この世代の男たちは、人間としての評価を、いかに仕事で成功したかで計りがちだとイーストウッドは考えている。しかし、こう言った価値観はもはや時代遅れであり、変わる必要がある。いくら年を取ったからと言って、時代の変化をついていかなければならない。何かを学ぶのに、変化するのに、人は遅すぎることはない。後年のイーストウッド映画のテーマが「運び屋」にも描かれている。
家族を大切にすること、それにはお金なんかじゃなく時間をちゃんと共有すること。いまの時代はそういった価値観が大事だということを、イーストウッドが身をもって体現しているから、この映画は説得力や共感力があるのだろう。車であっち行ったり、こっち行ったりしてるだけなのに。

若い人にとっては、改めて価値観の変化を垣間見ることができるし、年配の人にとっては、いつだって時代に追いつくことの勇気をもらえる映画になっている。そんな映画だった。
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