映画大好きそーやさん

窓ぎわのトットちゃんの映画大好きそーやさんのネタバレレビュー・内容・結末

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

今やテレビスターの座に登り詰めた黒柳徹子の、真実の物語。
予告が出る前からずっと楽しみにしていた本作ですが、期待以上の出来で大満足でした。
シンエイ動画の作画はずっと安定しており、所々で力の入ったアニメーションが挟まれていく構成も素晴らしかったです。
電車を再利用した教室、男女関係ない全裸のプール、雨降る夜の町と、どれもが違ったテイストで飛躍していく様が面白く、電車の教室ではお絵描き帳の絵が動き出したようなアニメーション、全裸のプールでは原作の表紙も飾っているいわさきちひろ風の作画で魅せるアニメーション、そして雨降る夜の町では色とりどりの舞台照明が輝くライブハウスやディスコのような雰囲気を漂わせてくるアニメーションと、凝りに凝ったものとなっています。
正直、これだけでも鑑賞価値が見い出せるほど優れたシークエンスの数々でした。
トットちゃんの想像力、見えている世界の具現化、或いはただの心情描写だったのかもしれませんが、兎にも角にもアニメーションがアニメーションたる所以が遺憾無く発揮されていたと思います。
そんな楽しいシークエンスが落ち着き出すと、徐々に戦争の年代へと突入していきます。
まだ子どもだったトットちゃんも、環境や作中親交を深めていた泰明ちゃんの死等が重なっていく中で、段々と大人に近づいていく過程がどこか切なく、前半から中盤にかけて存分に内情とリンクしたファンタジー的なアニメーションを見せられてきたからこそ、より辛いものがありました。
話が前後してしまいますが、トットちゃんと泰明ちゃんとの関係性も微笑ましく、ハンディキャップを背負った人との関わりを経験したことによって、トットちゃんの視野が多分に広がることにつながったと思います。
本作は2人の交流がメインに描かれていると言っても過言ではないため、いかにトットちゃん、ひいては黒柳徹子にとって泰明ちゃんの存在が大きなものであったかは想像に難くありません。
木登りのシークエンスと前述した雨降る夜の町のシークエンスが、特に印象に残った2人の場面であり、泰明ちゃんが1人ではできないと半ば諦めていた木登りを2人で乗り越えた、達成したからこそ心を通わせ合うことができた、雨降る夜の町にて『雨に唄えば』のようなダンスにまで2人は至ることができたのだと、物語的な成長がアニメーションと共に立ち上がってきて、気づけば芯まで感情移入していました。
それ故に、泰明ちゃんの唐突な死はトットちゃん同様受け入れ難く、追い討ちをかけるように町中を駆けるトットちゃんの背後に映る戦争の傷跡、見ない振りなどできる筈もない現実に、静かに涙を流していました。
他にも役所広司演じる小林先生等、書きたいことも多いのですが、これくらいにしておきます。小林先生、本当にいいキャラクターでしたね!(自叙伝なのでこういう言い方でいいのかわからないですが!)
総じて、ベストセラーとして多くの人に読まれてきた名著をフルに活かす、アニメーション映画の新たな名作を劇場で観ることができ嬉しい限りです!