たにたに

枯れ葉のたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

✨2024年5本目✨

リサイクル工場で働く中年男性。
スーパーのパートとして働く中年女性。
カラオケバーで視線が合った2人の静かな恋物語。

映画館の座席はそこそこ埋まっていたように思う。監督の思いが伝わっているのだなと感じた。

🟢流石のアキカウリスマキ節
前作の「希望のかなた」が彼の作品の初見で、見たことのない演出に呆気にとられていたが、今作も変わらず登場人物達は全員、無表情かつ棒演技を貫いている。
アキカウリスマキは、あえて役者に演技させないことにより、我々に、そこにはどのような感情があるのかを想像させようとしている。シュールさはない。
小さな幸せや、悲しみや、喜びをしっかり感じ取ることができるのだ。

コメディ要素もある。
クソつまんない(→ごめんなさい)ジム・ジャームッシュのゾンビ映画を2人で見るシーンなんて最高です。笑うところなのであそこは。

🟢世界幸福度1位フィンランド
福祉国家として医療も教育支援も充実しているフィンランド。スーパーで働く女性は、廃棄処分になった食品をくすねて、狭いアパートに帰るとテレビもなくラジオを点ける。そこから聞こえるのはロシアによるウクライナ侵攻のニュース。電気代の請求額を見て、慌てて部屋中の電気を消す。

リサイクルショップで働く男性は、防護服を着てエアスプレーで埃や錆を落としている。休憩時間にはタバコを吸い、家もなく仲間達との共同生活をし、寂しく酒を飲む。
「タバコをやめたらどうだ」という仲間の声にも、「どうせ肺が埃まみれで死ぬさ」と返す。ラジオからはウクライナの悲しいニュースが流れる。

どうだろうか。幸福度1位といえども、現実、全員が幸せな笑顔あふれるユートピアではない。

🟢愛に飢えた2人
もしくは愛に気付いたとも言うべきか。

男はまだ数回しか会っていないのに結婚を意識している。しかし、彼女の家でディナーを取ると酒のことばかり。彼女を失望させる。

ラジオから聞こえて来るウクライナに関するニュースに、女はひどく落ち込むも、男はそこまで気にしていない。

ホームレスに廃棄の食べ物を分け与えたり、殺処分になりそうな犬を引き取る彼女。そんな金などどこにあるのか。男が交通事故に遭って、毎日のように病院に見舞いに行く。
彼女は誰かに愛を与えたいように見える。
一方で、男は愛を求めている。
バーで聞いた女性バンドの音楽に1人で死んでいくことの寂しさを募らせる。男は心が弱い。

もちろんこれは男女の優劣とか主従関係を示すものではない。
人間の支え合いというのは、そういうものだとカウリスマキはシンプルに我々に伝えてくれる。
これが大きな勘違いや軋轢を生むと、戦争へと発展する。

松葉杖をついて歩く男と、そこに寄り添う女。枯れ葉の中を歩く、素晴らしいエンド。
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