たにたに

哀れなるものたちのたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

✨2024年14本目

橋から飛び降り自死したベラを拾い上げたバクスター博士。
彼女のお腹の中にいた胎児の脳をベラに移植させ、姿は大人のままベラは再び生まれた。

綺麗な顔立ちであるベラ・バクスターに、好意を持つ男たち。結婚を申し出る男。外出を許さない博士。その中でも弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)は性に目覚め始めたばかりのベラを、"何も知らない"をいいことに旅へと道連れし、幾度となく性行為を繰り返す。

男にコントロールされるベラの姿。
非常に違和感や嫌悪感を感じる物語の中で、ベラの成長が今作の見所である。

船上で様々な人と交流した時。
無邪気にダンスを踊る姿。
旅先で貧困に悩む人々を見た時。
娼婦としてお金を稼ぎ始めた時。
男性に選択権があることに疑問を抱いた時。
父であるバクスターの死を看取った時。

わずか数年で様々な経験を経て、ベラは生まれ変わった。支配されてきた過去を爽快に復讐して。


無邪気な探究心って大人になるにつれ抑圧されていくなという印象がある。
社会的規範という檻の中で。
もちろん法律というルールに従うのは当然のことだが、大人なんだから、とか女性なんだから、男なんだから、と人間特有の感情が伴って空気を読み始めると途端に自制心が生まれる。
ベラは大人の姿だから、どうしても我々は彼女をおかしいなと見てしまう。
だけれども我々は常に経験を経て、人生を更新し続けているはずだ。その場に留まることはできない。そして見事に彼女は強くなる。
彼女が大人の姿だからこそ、我々も感情移入がしやすいのだと思う。
たにたに

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