わたがし

Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのちのわたがしのレビュー・感想・評価

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 3Dブルーレイで観た。画面の奥に舞台が広がっていて、そこでダンサーたちが踊っている。一挙手一投足が3Dの立体感で生々しく、時に人工的に見える。3D映像が孕むこの相反する二要素ともを愛している作家が作り上げた3D映像だなと思った。
 舞台の客席に座っているような感覚(現在)の状態から、舞台の奥の映像(過去)を注視するという体験。映像を観るのではなく「映像を観るという体験を観る」みたいな奇妙な感覚になり、観てないけどたぶん(山田孝之3Dを観た予測から)フラッシュバックメモリーズ以上のことをやっている気がする。
 箱庭効果、ディゾルブ時のカット間の立体感のズレ等も全部意図的に演出に生かしているのは本当に頭が下がる。のびのびといろんな立体映像実験が行われていて、ドキュメンタリーって劇映画に比べて本当に自由だなと久しぶりに感じた。
 ネットのどっかのレビュアーが「ダンスとは空間を作り出すことで、それを街とか森で行い3Dで撮影することでその空間の変容が捉えられている」「これを2Dで撮ったらダンサーと背景が馴染んでしまって、最初から空間がダンサーに支配されているように映るだろう」とか言っていて、自分はダンスに対する感受性不足でそんなこと思わなかったけど一理あるなと思った。3D映像作家は、3Dは被写体と空間を必要以上に切り離して2Dとは全く違う情感を作り出してしまうという点にもっと自覚的になる必要がある。
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