いの

アラビアのロレンス/完全版のいののレビュー・感想・評価

4.3
タイトルと長尺であること以外は知らずに鑑賞。おうち鑑賞はアタシには無理かなと思って映画館へ。古代か中世の映画かと思ってたら、いきなり大脱走のスティーヴ・マックィーンみたいにかっちょよくバイクで走るしビックリ。これは第一次世界大戦下での話でした。


上り調子の前半(ロランスの苦悩の萌芽は、やがて大きな問題へと直面するだろうという予感を孕みながらだけど)と、重さに満ちた後半。イギリスの いったい何枚舌なの?外交と、アラブの人たちの思い(が痛いほどわかるゆえ)との板挟み。揺れ動くロランスの心情。結局はどこにも腰を落ち着ける場所などないこと。魅力的な、アラブの首長や王子や人々(アリ&王子&もうひとりの方がとても印象的、若いふたりの従者も)。


アラブの人たちの服装(何という単語が妥当なのか、理解してなくてすみません)にも目を奪われた。風が気持ちよく通り抜けていくような服、砂漠のなかでその服のフード部分に棒を突き立てれば1人用簡易版テントに早変わり、それはまことに理にかなっているのだと。ラクダにかける織物もステキで、ラクダ(に乗った人)が歩く後ろ姿は、織物のフリンジが気持ちよく揺れて、まるでフレアスカートを揺らして歩く美人のようだと感じた次第。女性は誰ひとり登場しなかった(し、恋愛要素が全くでてこないのもとても良いと思う)けど、ラクダが女性の役割を担っているような気もした。砂漠の風景も、時々砂が青白く舞ったりして、月の色も変化したけど、なんかそういうのも体感させてもらった。イギリスからみたアラブだけじゃなくて、アラブの人の思いなども垣間見せてくれたのも良かった。列車の襲撃場面はマカロニを想起した。七宝のナイフみたいなもの出てきたし、ドイツ軍の銃:モーゼルが出てきたのも個人的にはうれしい。


このロランスが、『Merry Christmas, Mr. Lawrence』のデヴィッド・ボウイに繋がるのだと勝手に思うことにした。今作での、水が心配ななかで髭を剃る場面は、WWⅡ下のパントマイム髭剃りへと繋がったはずだ。きっとそう
(→あわわ💦💦勘違いだったー💦💦でもそう思い込みたい自分がいるんだもん←言い訳💦💦)




〈追記〉2024年3月

「家に帰ったとき妻はまだ起きて僕を待っていた。彼女はパジャマの上にカーディガンを羽織って、ヴィデオで『アラビアのロレンス』を見ていた。ロレンスが幾多の困難を乗り越えた末に砂漠を横断して、スエズ運河にようやくたどり着くシーンだった。彼女はその映画を、僕の知っているだけでもすでに三回は見ていた。何度見ても面白い、と彼女は言った。僕は彼女のとなりに座って、ワインを飲みながら一緒にその映画を見た。」

『国境の南、太陽の西』村上春樹 講談社文庫 1995年 153頁
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